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「勤務間インターバル制度」とエッセンシャル・ワーカー

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こんにちは、佐佐木 由美子です。

今回は、勤務間インターバル勤務制度を取り上げてみたいと思います。

「勤務間インターバル制度」とは、1日の勤務終了後から翌日の始業時刻の間に一定以上の休息時間(インターバル時間)を確保する仕組みを言います。

働く人の生活時間や睡眠時間を確保することで、健康の保持や仕事と生活の調和を図るとともに、生産性の向上や従業員の確保・定着にも効果があると言われています。

例えば、夜23時に勤務を終了した場合、インターバル時間が11時間だとすれば、本来の始業時刻が9時であったとしても、10時から働き始めることになります。

日本では、働き方改革関連法に基づき改正された労働時間等設定改善法によって、勤務間インターバル制度の導入が事業主の努力義務として、2019年4月から施行されています。

一方、欧州連合(EU)では、1990年代から加盟国の労働者に同制度を義務づけ、一部職種を除き、24時間ごとに最低でも連続11時間の休息を確保するために必要な措置を設けることとされています。インターバル時間数は、ドイツ、フランス、イギリスにおいては11時間、ギリシャ、スペインでは12時間となっています。

勤務間インターバル制度は必要か?

時間外労働が常態化しておらず、十分な休息が確保できていれば、そもそも勤務間インターバル制度の導入など必要ありません。案の定、適正な労働時間で働いている企業では、勤務間インターバル制度について全く関心のない様子でした。

しかし、業務の繁忙期などによって、特定の時期に労働時間が集中する場合や、夜勤、交替制勤務といった勤務体系において、勤務間隔が比較的短く設定されている場合などもあり得るでしょう。

こうした際に、働き手が十分な睡眠時間や生活時間を確保できるよう、勤務間インターバル制度を導入することは有効だと考えます。

慢性的な睡眠不足が続くと疲労が蓄積され、健康状況や作業パフォーマンスに支障をきたすことは研究結果からも明らかとなっています。

米国における研究では、睡眠時間が6時間未満の者では、7時間の者と比べて、居眠り運転の頻度が高いことが、日本における研究では、交通事故を起こした運転者で、夜間睡眠が6時間未満の場合に、追突事故や自損事故の頻度が高いことが示されています。これは命に関わる問題です。

まして、コロナ禍における現状においては、社会生活基盤等を支えるために、医療従事者をはじめ福祉や保育、運輸・物流、公共機関など様々なエッセンシャル・ワーカーの方たちが日夜、懸命に働いています。私たちの生活は、そのうえで成り立っていることを忘れてはいけないでしょう。

感染リスクもある状況下で、心身の健康状態を維持していくことは、普段以上に重要な意味を持ちます。エッセンシャル・ワーカーの方たちが睡眠時間や休息を確保できるように、一定の勤務間インターバルを設けることは、まさに今検討すべき課題だと考えます。

霞が関がなぜ今?

人事院が国家公務員の働き方改革に関する研究会の初会合(1月末開催)において、「勤務間インターバル制度」の導入などを検討しています。また、日々の始業や終業時間を柔軟に設定する「フレックスタイム制」の拡充や、本人の希望でテレワークができるようにする制度など、各種検討されているようです。

霞が関で働く国家公務員といえば、長時間労働の激務で知られています。内閣人事局が2020年12月に公表した正規の勤務時間外の在庁時間をみると、2020年10~11月に20代総合職の3割が過労死ラインの目安とされる月80時間を超えていました。これは想像に難くない結果です。

本来であれば、国が主導する「働き方改革」において、霞が関は率先してメスを入れるべき場所であるはず。それがなぜ今なのでしょう?

人事院がこうした対策の検討に乗り出すのは、国家公務員の志望者の減少傾向に歯止めがかからないことがうかがえます。2021年度の総合職試験の申込者数は20年度と比べ14.5%も減少。一方、20代若手の国家公務員総合職の退職者数は6年前から4倍に増加しています。

こうした雇用環境下では、優秀な人材の採用もリテンションも難しいと、ようやく本腰を入れたのかもしれません。

なお、冒頭の研究会は、2023年夏までに勤務時間制度の改善策を盛り込んだ報告書をまとめる予定で、人事院による政府への勧告にも反映を目指すということ。


世の中には様々な仕事があり、多様な働き方があります。

それぞれの職場の必要に応じて、「勤務間インターバル制度」の検討が求められるのではないでしょうか。

執筆者プロフィール
佐佐木 由美子

社会保険労務士、執筆家、MBA。グレース・パートナーズ株式会社代表。働き方、キャリア&マネー、社会保障等をテーマに経済メディアや専門誌など多数寄稿。

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