働き方

週休3日制という働き方は広がるか

働き方

週休3日制という働き方が、にわかに注目されています。

2021年6月に閣議決定された、政府の「経済財政運営と改革の基本方針2021」(骨太の方針)においても「選択的週休3日制」が盛り込まれました。

みずほフィナンシャルグループは、2020年12月から希望すれば週休3日・4日で働ける制度を導入。塩野義製薬も2022年度から希望する社員が週休3日を選べる制度の導入を発表して注目を集めています。

塩野義製薬の週休3日制

制度の対象となるのは、入社3年未満の社員と管理職を除いた全社員の7割にあたる約4,000人。介護や育児での利用のほか、増えた休みを使って大学院などで学び直し(リスキリング)をしたり、副業したりすることで社員が新たな経験や知識を積むことを想定しています。

給与は週休2日フルタイム時の8割に下がりますが、1年ごとに申請し直すことが可能。土日以外は、希望する特定の曜日を休みに設定できるということです。

そうなれば、休みの日である平日に別の企業で働くこともでき、新たなアイディアや新規ビジネスの創出につながる可能性も期待できます。

また、学び直しを後押しするため、学びの費用を年間で最大25万円補助する社内制度の活用をうながすということ。教育訓練給付金なども活用すれば、学びのために積極的な投資もできます

週休3日制における労働時間・給与・仕事量の関係

週休3日制について、労働時間・給与・仕事量の関係をみると、次の3パターンに分かれます。

週休3日制における労働時間・給与・仕事量の関係

A: 労働時間が減ることで、給与も仕事量も減少する

B: 総労働時間は変わらないため、給与も仕事量も同じ

C: 労働時間は減るが、給与も仕事量も同じ


今のところ多くの企業で採用が想定されるのは、労働時間が減ることで、その分給与も減額されるAのパターンです。

変形労働時間制を用いて、1日の所定労働時間を増やすことで、週の総労働時間を変えず、給与も同じというBパターンを採用する企業もあります。これを実施しているのがファーストリテイリングで、1日10時間労働として週40時間をキープ。営業時間の長い小売業では、うまくマッチするやり方とも言えます。

労働時間を減らして給与を維持するパターンCは、高い生産性が求められると同時に成果型の給与体系が基本となるため、職種は限定されるのではないでしょうか。

週休3日制と働く人のニーズ

ここで、週休3日制を希望する働き手のニーズについて考えてみましょう。

まずは、育児や介護、あるいは教育(学び直し)など、時間を必要としている人たちです。この人たちにとっては、労働時間が減ることで可処分時間が増えることは、大きなメリットがあります。

この場合、求められるのは上記のパターンAかC。そもそも、育児と仕事を両立させている人たちは、残業ができないため、生産性を意識して効率的に働いていると考えられます。そのため、さらに生産性を高めるCもポテンシャルは十分にある一方、プレッシャーを感じる人もいるかもしれません。

なお、育児に関しては、保育園の入園ハードルについて考えておく必要があるでしょう。認可保育園に入るための点数基準は、多くの自治体において労働時間や労働日数に基づいたものとなっています。そのため、休日が増えることでポイントが下がってしまい、特に待機児童の多い地域では、保育園に入れないという問題が出てくるかもしれません。

次に、副業・兼業など、本業以外のビジネスを広げたいタイプです。

この中にも、スキルや経験などを高めるためのキャリアアップ系と、今後の布石を打っておきたいセカンドキャリア模索系、さらに収入アップを目指す層とタイプが分かれるでしょう。

また、週休3日とすることで、仕事のペースを落として働きたい人もいるはずです。育児や介護など必ずしも「やるべきこと」があるわけではないものの、自分のために時間を使いたい人もいます。これまでバリバリと働いてきた40~50代の人やシニアの方、あるいは若い世代でも、生活が可能ならばマイペースで働きたいというニーズもあるでしょう。

年金や給付金への影響をシミュレーション

週休3日になっても給与が同じであれば、年金へのインパクトは特にありませんが、問題は給与が減額されるケース。厚生年金保険に加入していることを前提とし、パターンAで考えたときの将来もらえる年金額について試算してみましょう。

例えば、給与が35万円(標準報酬月額36万円)だった人が週休3日制になって給与が2割減の28万(標準報酬月額28万円)になるとします。

給与が35万円の場合、本人が支払う厚生年金の保険料は39万5280円。一方、給与が28万円になる場合、本人が支払う厚生年金保険料は30万7440円。保険料は減ることを良いと考える人は多いでしょう。でもこれは同時に、将来もらえる年金額も下がることを意味しています。

仮に今後30年間、給与が月35万円で30年加入したとして、将来もらえる老齢厚生年金を試算すると、約71万円(年額)になります。一方、給与を28万円に減額した場合は年額で約55万円になる。この差、年16万円。25年受給した場合、約400万円の差が生じます。

年金は老後の暮らしを支えるだけのものではなく、障害で働けなくなったときや、万が一亡くなった場合の遺族厚生年金もあります。

さらに、健康保険面で考えると、病気になったときに申請できる「傷病手当金」や産休中の生活保障としてもらえる「出産手当金」などにも影響が出てきます。

こうした給付金は、「標準報酬月額」を基準に計算されるため、給与が下がることで標準報酬月額も必然的に下がるからです。

数字のシミュレーションはできますが、あくまでも今と同じまま30年加入したことを仮定して試算したものです。この数字だけを見て、損だと判断するのはどうでしょうか。

これだけ変化の激しい時代に今と同じ給与を30年間もらい続けられる保証はどこにもありません。

ましてフリーランスになれば、いくら稼げたとしても、厚生年金という視点でみたら、まるで変ってしまいます。将来の年金に備えたい場合は、iDeCoの活用など他にも打つ手は考えられます。

まとめ

以上のように、週休3日制という働き方について様々な意見はありますが、選択肢が広がることについて、私は好意的に受けとめています。

週休3日制で大事になってくるのは、時間の使い方ではないでしょうか。

週休2日から3日になることで、当然ながら本人が使える可処分時間が増えます。人生における貴重なリソースである時間を、様々な経験をするために使うなど本人の思い通りに活用できることは意味があることです。

これまで働く時間を短くしようすると、パートタイマーやアルバイトなど、正社員という立場が維持されないことが多かったと言えます(週休3日制が必ずしも正社員のものとは限りませんが)。時短勤務制度があっても、育児や介護などの理由に限定される企業はいまだ少なくありません。

理由を限定せず、選択的週休3日制が可能となれば、ワークスタイルのバリエーションが増えることになります。

副業・兼業の解禁もセットで行うことはポイントになるでしょう。

「週休3日制はコストカットの策だ」という意見もありますが、コストカットだけを狙ってわざわざ手間のかかる制度を企業が導入するとは思えません。

新たなスキルを身に着けるための学び直しや副業などによって個々人がスキルや経験値を高めることで、生産性の向上や新規ビジネスの創出などイノベーションにつなげたい、企業の競争力を高めたい、というのは偽りのない大きな狙いであると考えます。

それに応えた成功事例がいろいろと出てくれば、この先駆的な取組みが評価されるようになるのではないでしょうか。


音声チャンネルのご案内

この投稿に関連する音声コンテンツは、下記のリンクからご試聴いただけます。

タイトルとURLをコピーしました