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【2024年4月改正】労働条件明示のルールはこう変わる③無期転換の明示

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こんにちは、佐佐木 由美子です。

2024年4月1日より、労働条件の明示についてのルールが改正されることになりました。

今後、転職・再就職される方をはじめ、人事労務の業務をされている方もぜひ理解しておきたい内容と言えます。

現在のワークルールについて確認をしながら、改正ポイントを3回に分けてお伝えします。

改正点のポイントは、以下のとおりです。

1.就業の場所・従事すべき業務の変更の範囲

2.有期労働契約における更新上限の有無

3.無期転換申込機会 →今回はココ

4.無期転換後の労働条件 →今回はココ

今回は第3回目として、「有期労働契約における無期転換の明示」を取り上げます。

第1回、2回目のエントリは、以下よりご覧いただけます。

無期転換ルールとは?

まず、無期転換ルールについて確認しておきましょう。

無期転換ルールは、同一の使用者(企業)との間で、有期労働契約が5年を超えて更新された場合、有期契約労働者(契約社員、アルバイトなど)からの申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換されることを言います。

たとえば、契約期間が1年の場合、5回目の更新後の1年間に無期転換の申込権が発生します(下図参照)。

そして、有期契約労働者が会社に対して無期転換の申込みをした場合、無期労働契約が成立します。会社は断る余地がありません。

出所:厚生労働省「有期契約労聾者の無期転換ポータルサイト

有期労働契約で働く人にとっては、無期労働契約への転換を申込む権利(これを「無期転換申込権」と言います)の行使により、契約期間の定めがなくなるため、 雇用の安定につながります。


ただし、無期転換後の雇用区分や労働条件については、会社によって制度が異なります。

無期転換ルールは、労働契約法第18条に定められているもので、通算5年のカウントは2013年4月1日以降に開始した有期労働契約が対象です。

しかし、こうした制度があまり広く知られていない、ということが指摘されていました。

無期転換ルールに関する改正点

労働基準法施行規則5条の改正よって、2024年4月から無期転換に関して以下の明示が盛り込まれることになりました。ポイントは2つあります。

1.無期転換申込機会の明示

有期契約労働者にとって、自分がいつ無期転換を申し込む権利が発生するかわからないケースも考えられます。

そこで「無期転換申込権」が発生する更新のタイミングごとに、無期転換を申し込むことができる旨(無期転換申込機会)の明示が必要となりました。

具体的に、〇年〇月〇日から無期転換の申込みができるかを明示することになります。

初めて無期転換申込権が発生する有期労働契約が満了した後も、有期労働契約を更新する場合は、更新の度に無期転換申込機会の明示が必要です。

2.無期転換後の労働条件の明示

無期転換申込機会の明示とあわせて、「無期転換申込権」が発生する更新のタイミングごとに、無期転換後の労働条件の明示が必要となります。

初めて無期転換申込権が発生する有期労働契約が満了した後も、有期労働契約を更新する場合は、更新の度に無期転換後の労働条件の明示が必要です。

転換後における給与や待遇等の労働条件については、労働協約や就業規則、個々の労働契約で別段の定めがある部分を除き、 直前の有期労働契約の労働条件がそのまま引き継がれることが原則的な考え方となります。

ただし、通常の労働者(正社員や無期雇用フルタイム労働者など)との均等待遇に十分考慮する必要があります。

 「労働契約は、労働者及び使用者が、就業の実態に応じて、均衡を考慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする。」

労働契約法第3条2項

2024年4月から、雇い止め告示(有期労働契約の締結、更新及び雇い止めに関する基準)の改正もあわせて行われることとなりました。

無期転換後の労働条件を決定するにあたって、他の通常の労働者とのバランスを考慮した事項(たとえば業務の内容、責任の程度、異動の有無・範囲など)について、有期契約労働者に説明するよう努めなければなりません。

労働条件明示のイメージについては、以下の厚生労働省「モデル労働条件通知書」も参照ください。

出所:厚生労働省「モデル労働条件通知書

まとめ

労働条件明示ルールの改正点について、3回にわけて取り上げて解説しました。

今回のように、改正の土台となる無期転換ルールの基本的な枠組みを理解していないと、「無期転換申込権」のタイミングがいつの時点を指しているのかすぐに理解できません。

労働契約を締結する際には、会社側はもちろんのこと、働き手自身も労働条件通知書に記載された内容が適切なものか理解できるようにしておきましょう。

特に、有期労働契約に関しては、前回取り上げた「更新上限の有無」も重要です。

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執筆者プロフィール
佐佐木 由美子

社会保険労務士、執筆家、MBA。グレース・パートナーズ株式会社代表。働き方、キャリア&マネー、社会保障等をテーマに経済メディアや専門誌など多数寄稿。

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