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「フレキシキュリティ」とは? デンマークと日本の大きな違い

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フレキシキュリティ政策とは柔軟な労働市場と手厚い失業給付、実践的な公的職業訓練の3つを相互連携した雇用政策です。1990年代にデンマークが先駆けて取り組み、「デンマーク・モデル」とも言われます。

フレキシキュリティ(flexicurity)という言葉自体は柔軟性を意味するflexibilityと安全を意味するsecurityを組み合わせた造語です。

デンマークがこうした政策を可能としているのは、政労使3者による緊密な連携が大きいと言われていますが、もともと解雇規制が緩やかで、流動性の高い労働市場だという特性も見逃せません。また、正規・非正規雇用における格差も低い点が挙げられます。

日本型雇用システムの上に成り立つ労働市場から見ると、真逆とも言える政策です。

日本で雇用の安全というと、長期雇用であること(いかに失業を防ぐか。有期労働契約よりも無期労働契約で同じ会社に長く勤務することなど)を是として、議論が進む傾向にあります。

一方、デンマーク・モデルでは、同じ企業内の雇用保証ではなく、職業訓練と手厚い失業給付を基盤とした、切れ目のない雇用の確保を指しています。これは非常に大きな違いです。

柔軟な労働市場が整備されていれば、そして実践的な公的訓練を受けることができれば、成長産業に労働力を移動することも実現しやすくなります。

そこに、手厚い失業給付で生活が守られれば、経済的にも精神的にも安心できます。

デンマークは高福祉国家であるだけに、国民の負担も大きく、税や社会保障をあわせた国民負担率は63%にものぼります。一方、日本は44.3%(いずれも2018年)。老年人口比率を見ると、デンマークは19%に対して、日本は26.6%と、いかにデンマークの国民負担が高いかわかります。(出所:財務省資料

注目すべきは、職業訓練が実践的内容であるということです。カリキュラムの内容は、経営者団体と労働者団体によって話し合って決められ、技術革新など労働市場ニーズの変化に対応して、毎年のように更新されていきます。

こうすることで、時代にマッチしたスキルを労働者自身が身に着けることができ、それが企業競争力の源泉にもなっているのです。

人生100年時代で長期化する職業人生を考えると、実に理にかなったシステムと言えるのではないでしょうか。

雇用政策を見直し、根付かせるには、(デンマークもそうであったように)相当な時間がかかるものです。

フレキシキュリティ政策は、2007年にEU内における雇用戦略の柱として位置付けられて現在に至りますが、もともとの労働市場の違いが大きく解雇規制の厳しい日本で、容易に真似出来るものではありません。ただ、このままで良いとも思えません。

日本ではここのところ、DXなどへのリスキリングが注目されていますが、公共職業訓練を受けたくとも枠が少なく、そもそも広く認知されているとは言えません。

また、「教育訓練給付制度」はあるものの、制度が複雑で、本人負担の割合は軽減されるものの一定の自己負担が求められます。つまり、自己投資ができる財政状況でなければ、受講もできません。

日本の社会保障制度は、自助が基本にあります。そこにフレキシキュリティ政策との差があります。

2018 年度の社会支出(OECD 基準)の総額は 125 兆 4,294 億円、対 GDP 比は 22.87%と、他のOECD諸国と比べ引けを取りません。

しかし、社会支出を政策分野でみると、最も大きいのは「高齢」の57 兆 6,766 億円(総額に占める割合は 46.0%)であり、「失業」となると 8,535 億円(0.7%)、「積極的労働市場政策」は8,376 億円(0.7%)と極めて低い割合になっています。(出所:2018年度 社会保障費用統計(概要)~国立社会保障・人口問題研究所より)

超高齢化社会の日本にとって、高齢対策は他国より重視される状況は理解できます。

ただ、生産年齢人口が減少する中で、未来を見据えるなら、希望する誰もが実践的な教育訓練を受けることができ、キャリア転換を可能とする土壌を整備していくことが重要ではないでしょうか。

今のところ、柔軟な働き方と安心した生活という「フレキシキュリティ」については、個人レベルでの課題と言えそうです。

これが社会全体における、解決すべきひとつの課題として、議論されるといいと考えます。

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