定年前後の働き方大全100

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定年を迎える女性たち、その先の働き方

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こんにちは、佐佐木 由美子です。

男女雇用機会均等法の施行後に働き始めた世代が、定年を迎えようとしています。

しかし、身のまわりを見渡してみると、民間企業で定年まで働く女性が意外と少ないことに気づくのではないでしょうか。

今でこそ出産後も働き続けることはごく普通になりましたが、かつては「寿退社」が当たり前。女性は「職場の花」と言われ、働きたいと思っても、男性のように入社して定年まで勤め上げること自体が、現実的には認められていませんでした。日本型雇用システムの中では、長い間女性は蚊帳の外にいたと言っても過言ではありません。

それが男女雇用機会均等法や育児・介護休業法、女性活躍推進法等の施行・改正を経て、まだ課題はあるものの、ようやく女性が定年まで働ける雇用環境になってきた感があります。

そうした状況も束の間、定年まで働くことは、もはやキャリアのゴールではなくなってきています

人生の長期化が働き方を変える

60歳で定年を迎えたとしましょう。その先、私たちはどれだけ生きることになるでしょうか。

2020年の日本人女性の平均寿命は87.74歳。毎年着実にこの数字は延びており、2040年に65歳を迎える人のうち、女性の2割が100歳まで生きると推計されています。

今後さらに延びゆく平均寿命からから予測すれば、定年後の生活期間が30年くらいはあるということです。その生活を年金だけで支えていくのは厳しい話。となれば、70歳どころか健康である限り働くことを想定していくようになっていくのではないでしょうか。

そうなれば、定年は単なるキャリアの通過点に過ぎず、その先の働き方まで見据えていかねばなりません。

もちろん、高齢になるに従ってフルタイムで働く人は少なくなり、個人差は広がっていくでしょう。

現行の法律では、満65歳までは企業側に雇用確保措置義務を課しているため、労働条件の折り合いがつけば、65歳まで働き続けることができるようになっています。

2021年4月からは、高年齢者雇用安定法の改正により、70歳までの就業確保措置を講じることが努力義務になりました。65歳までの雇用確保措置と大きく違う点は、企業が65歳を超えて働くことができる対象者の基準を設けることができることや、雇用だけに限らず業務委託契約等で働く多様な選択肢が含まれてくることです。

多様化する働き方

「働く」とひと口いっても、雇用されて「労働者」として給与をもらう働き方と、業務委託契約で個人事業主・フリーランスとしての働き方には、大きな違いがあります。

日本の労働法制においては、労働者が手厚く保護されており、労働=賃金という考え方が根付いているので、たとえ成果が上がらなくとも、1時間働けば最低賃金を得ることができます。しかも、解雇規制も厳しいため、企業側も簡単に従業員を解雇することはできません。

一方、個人事業主の立場では、いくら働いても、それが報酬に直結するわけではありません。給与のように毎月コンスタントに報酬を得られる保障はありませんし、あらゆる役割を自身で担い、会社のように守ってくれる後ろ盾もありません。

それぞれの立場でのメリット・デメリットがありますが、マインドセットやスキルセットが大きく異なることは確かです。その違いを知っておくことは大切です。

私自身も会社員から個人事業主、そして従業員を雇用する立場となってマインドセットの違いを実感しました。社会保険労務士として、経営者と労働者の間に立つ仕事をしているからこそ、常々感じることでもあります。

長く細くマイペースに働いてくならば、個人事業主やフリーランスとしての働き方について検討する価値は大いにあると考えます。

新しい挑戦をするなら、踏ん張りがきく体力・気力があるうちにやっておくに越したことはありません。個人差はありますが、40代後半~50歳前半くらいまでに働き方、キャリアの方向性を見定められれば、かなりドラスティックなシフトであったとしても、十分に準備する時間を確保できます。

しかし、転職や副業・兼業の経験もほとんどなく、同じ会社で長く勤めている状態から、定年を契機にいきなりフリーランスに転身するというのは、かなりのリスクがあると言えます。準備期間はしっかりと設けて、様々な試行をしてみること。それには副業・兼業はとても良いトレーニングになります。

もし、フリーランスの転身を検討しているなら、副業として自分で今後やっていきたいビジネスを始めてみるのが一番です。仮にうまくいかなかったとしても、そこには大いなる学びがあるはず。別のビジネスにするか、あるいは雇用される立場で働く方が向いているか、自分の特性を理解するのに役立ちます。本業があるからこそ、落ち着いて取り組めるというメリットも見逃せません。

「新しいことを始めたいけれど、遅すぎるのでは……?」という声を聞くことがあります。

何かを始めるのに遅すぎるということはありません。強く感じるものがあったときが、その人にとってベストなタイミングなのです。年齢で自分の行動を規定する必要などまったくありません。

80代でプログラマーとなった若宮正子さんは、58歳から独学でパソコンを習得し、定年後に新たな働き方を切り拓いています。好奇心や興味の先に、新しい道があるかもしれないと思ったら、ちょっと未来が楽しみになりませんか。


人は働くというと、何をするか「仕事」から考える人が多いように感じます。けれど、自分が理想とする働き方から考えてもよいのではないでしょうか。

これから働き方は、ますます多様化していきます。働くペースも人それぞれあっていいはずです。

人生100年時代において、長く働くことを想定するなら、雇用されるか否か、その両方を取っていくのか、自分の立ち位置、働き方について、じっくりと考えてみてはどうでしょうか。それはすなわち、自分がどのような生き方をしたいのか、という根源的なところにつながっていく大事なテーマです。

漠然とした不安を抱いているばかりでは、人生を楽しめません。希望ある未来を、心のキャンバスに描いていきませんか。

ゴールが見えてきた50代半ば、定年後も会社で働ける?

40-50代の働く女性のためのメディア、日経ARIAで連載していた「キャリアとお金の相談室」。これは定年後を見据えた働き方、生き方を意識し始めたシングル会社員の悩みにお答えする企画で、私はキャリア面でアドバイスをしています。

今回は、定年というゴールが見えてきた50代半ばの女性からのご相談でした。ご興味のある方は、ぜひこちらもご覧ください。

ゴールが見えてきた50代半ば、定年後も会社で働ける?:日経xwoman


執筆者プロフィール
佐佐木 由美子

社会保険労務士、執筆家、MBA。グレース・パートナーズ株式会社代表。働き方、キャリア&マネー、社会保障等をテーマに経済メディアや専門誌など多数寄稿。

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