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産後パパ育休の特徴と課題

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こんにちは、佐佐木 由美子です。

育児・介護休業法が改正され、2022年10月より出生時育児休業(通称「産後パパ育休」といいます)が創設されることになりました。

産後パパ育休は、子の出生後8週間以内に4週間まで、2回に分割して取得できる、主として男性をターゲットとした制度です。

出産直後は身体へのダメージと回復においても無理のできない大切な時期。ここでパートナーが果たす役割はとても大きいと言えます。

育児休業と産後パパ育休の大きな違い

ところで、育児・介護休業法上の育児休業は、子の養育を行うために、休業期間中の労務提供義務を消滅させる制度であり、休業期間中に就労することは想定されていません。

労使の話し合いにより、子の養育をする必要がない期間に限り、一時的・臨時的にその事業主の下で就労することはできますが、あくまでも例外的な位置付けです。

しかしながら、産後パパ育休中は、労使協定を締結している場合に限り、従業員が合意した範囲で就労が可能とされている点に大きな特徴があります。それも休業期間中の所定労働日・労働時間の半分まで働くことができます。

そうでもしなければ、出生後8週間以内に最大4週間までとはいえ、今の日本では、男性が育児休業を取得するのは難しいということなのでしょう。取得率を高めるための、苦肉の策なのかもしれません。

(注)休業中は就業しないことが原則であるため、休業中の就業を認めないことも可能であり、その場合は労使協定の締結は不要です。また、従業員から就労の申出があった場合、必ず就業させなければならないわけではありません。

しかし、部門内で業務仕分け等をあらかじめ行ったり(「育休取得は職場にとってもチャンス」参照)、権限を委譲したりすることで、休業中に就労せずに、育児にコミットすることは、きっとできるはずです。

子育てが最も大変な時期に、せっかく産後パパ育休を取りながら、もしそのうち半分近くも働かねば成り立たないとしたら、余程人手が足りないか、マネジメントのやり方に問題があるのではないでしょうか。


それでも、産後8週間以内の極めて重要な時期に、子育てと向き合うことができる産後パパ育休を取ることには、大きな意義があります。

子どもの命と成長に責任を負う経験は、家族の絆を育むと同時に、その後の家事・育児を主体的に担っていくことにつながっていくはずです。

育児休業を希望していても、申請できない男性が多くいること等を踏まえれば、新たに創設される産後パパ育休制度は、大いに活用されるべきでしょう。

くれぐれも、ポーズだけの「取るだけ育休」という事態だけは避けたいものです。

産後8週間以内の育休ニーズは高い

民間の調査※によれば、夫が育休を取ったことがない人のうち、出産直後(8週間以内)に、夫が育休を取れたとしたら取ってほしかったと回答したワーキングマザーは63.6%でした。これを年代別で見ると、20代は69.0%に対し40代は57.8%と、夫婦での子育てに対する意識は、年代によっても差が見られます。

※マイナビ転職「ワーキングマザーの働きやすさに関する意識調査(2022年)

同調査において、夫が育児休業を取ることに対する不安として、「収入減少」と回答した割合は72.1%。次いで、「夫のキャリアへの影響(49.8%)」「夫の職場での人間関係悪化(36.1%)」という結果でした。

理想の育休取得パターンを聞くと、「妻がメインで夫も必要に応じて」が圧倒的に多く78.1%。理由としては、「夫のほうが収入が高い」「昇進にかかわるから」などの意見が多く挙げられました。

この結果を見て感じたのは、男女間における賃金格差の問題が、育休の取り方にも影響を与えているということです。そして、夫のキャリアを優先させようという意識が強く働いてしまうことです。

収入減少に対しては、雇用保険の「育児休業給付金」(産後パパ育休については「出生時育児休業給付金」)の制度が活用できます。産後パパ育休期間中の就業が一定水準以内であることなど要件はありますが、雇用保険の被保険者であれば、原則として休業開始時賃金の67%(育休開始6か月経過後は50%)が支給される仕組みです。また、社会保険料の免除制度もあります。

※育休期間中の社会保険料の免除については、こちらの記事を参照ください。

休業中の収入面よりも深刻だと感じるのは、育休を取ることでキャリアにおいて不利になるのではないかという不安が大きいということです。男性の育休取得におけるハードルの一つと言えるでしょう。

こうした懸念をどう払拭していくか、企業の姿勢も問われています。

執筆者プロフィール
佐佐木 由美子

社会保険労務士、執筆家、MBA。グレース・パートナーズ株式会社代表。働き方、キャリア&マネー、社会保障等をテーマに経済メディアや専門誌など多数寄稿。

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