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フィンランド人の働き方から学べること

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こんにちは、佐佐木 由美子です。

フィンランドといえば、充実した社会保障制度とサウナを愛する自然豊かな国……というイメージが強いですが、そればかりでなくワークライフバランスや幸福度も高いことで知られています。

「世界幸福度ランキング」2021年版では、149か国中フィンランドが1位を記録。しかも、4年連続1位です。ちなみに、日本は前年から4つ順位を上げたものの56位にとどまっています。何とも微妙な順位ですが、それにどこか納得してしまうところもあるのでは?

World Happiness Report 2021」より抜粋

フィンランドの働き方

新型コロナウイルスによるパンデミック以前から、フィンランドでは週1日以上の在宅勤務率は3割程度実施されていたと言われています。現在はさらに柔軟な働き方が進んで、就労時間の半分は、働く時間も場所も、従業員と雇用主が相談して自由に決められるそうです。

有給休暇の取得率はほぼ100%、男性の育休取得率は約8割、午後4時には仕事を終えて帰宅するという、夢のような働き方を実現しているというから驚きを隠せません。

フィンランドも法定労働時間は日本と同じく1日8時間・週40時間以内ですが、残業自体が少ない上に、11時間以上の勤務間インターバル(1日の勤務終了後、翌日の出社までの間に一定時間以上の休息時間を設ける制度)が義務化されているということ。

夏休みはしっかり1か月取って、コテージでサウナに入り、自然に触れあって心身共にリラックスする。ワークライフバランスの充実度は、世界でも類を見ない程、進んでいるといえるのでしょう。

※フィンランドに関する参考文献(おすすめ図書)「フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか」

フィンランドの教育制度

日本と大きく異なるフィンランドですが、特に日本と違う点を3つ挙げるとすれば、年齢差別がないこと、ジェンダーギャップが少ないこと、教育システムの発達にあるのではないかと感じます。ちなみに、世界経済フォーラムが発表する「ジェンダー・ギャップ指数2021」でフィンランドは第2位です。

教育制度についてみると、フィンランドの基礎教育は日本と同じく9年間。驚くべきは、義務教育ばかりでなく大学院まで授業料が無償だということ。さらに、偏差値というものがないから、学歴差別もない、ということです。

卒業してすぐ即戦力として働けるように、職業高校や専門職大学に進む人も多く、看護や社会福祉関連、プログラミング、設計、エンジニアリング、料理や美容といったサービス業など、学べる幅が広く、かつ実践的だということ。

地域の学習センターでは社会人向けの様々な講座を安価で受けることができ、資格を取ったり新たな勉強を始めたり、転職やキャリアアップにも役立てることができます。

こう聞くと、昔からフィンランドの教育水準は高かったと思われるかもしれません。

しかし1970年代までは、高等教育を受けた大人は人口の2割しかいませんでした。

それが世界から絶賛される教育システムを構築できたのは、全政党が一致し、政治上において国の最重要課題として、時間をかけて教育改革に取り組んできた結果です。

この点においても、日本は見習うべきでは?

日本におけるジェンダーギャップはかなり根深い問題で重要なテーマですが、教育機会の平等、教育の質を高めることは、大きな課題だと考えます。

教育ついて思うこと

人生100年時代、70歳まで働くことをすでに視野に入れて社会保障制度の見直しや働き方改革が進められている最中、それを実現するには、実践的な教育が必要です。

実践的といえば、最近特に注目されている「リスキリング」です。これは「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを習得すること」を指します。

学びに関しては、近年「リカレント教育」という言葉が多く使われていました。

recurrentとは、「繰り返す」「循環する」という意味で、リカレント教育とは学校教育からいったん離れて社会に出た後に、それぞれ必要なタイミングで再び教育を受け、また働くという意味合いで使われます。つまり、働く→学ぶ→働くの循環です。

一方、リスキリングは、これからも仕事において価値を生み続けるための必要なスキル、という点が強調されています。

特にデジタル化と同時に生まれる新しい職業や、仕事の進め方が大幅に変わることが見込まれる職業につくためのスキル習得を指すことが増えています。

リスキリングは世界経済会議(ダボス会議)でも大きく取り上げられていて、世界的な潮流としてデジタル化、DX(デジタルトランスフォーメーション)時代の人材育成は避けられないものとなっています。

ただ、公教育の在り方については、すべてをデジタル化に結びつけるのではなく、じっくり丁寧に進めることが大切ではないかと思います。

教育は、人を創る根幹にあるものです。

かつてフィンランドが、教育を国の最重要課題と位置付け、時間をかけて取り組んで今の社会を形作ったように、日本も教育の在り方について、未来の子どもたちのために考えていく必要があるのではないでしょうか。

そして社会人になってからも、その気になればいつからでも何度でもやり直せる教育機会が広く与えられ、再チャレンジが可能な国であってほしい。長期化する職業人生を生き抜くためにも、大切なことだと考えます。

フィンランドに関する参考文献(おすすめ図書)

執筆者プロフィール
佐佐木 由美子

社会保険労務士、執筆家、MBA。グレース・パートナーズ株式会社代表。働き方、キャリア&マネー、社会保障等をテーマに経済メディアや専門誌など多数寄稿。

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