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社会保険とお金

退職後の健康保険、3つの選択肢

社会保険とお金

こんにちは、佐佐木 由美子です。

まもなく新年度を迎えますが、この時期に働き方を見直される方もいるのではないでしょうか。

例えば、会社員を辞めて、フリーランスになるという方もいらっしゃるかもしれません。

会社を退職するとき、気をつけたいことのひとつが「健康保険」のこと。

このエントリでは、退職後の健康保険における3つの選択肢について解説します。

退職後の健康保険、3つの選択肢とは?

退職後の健康保険には、「健康保険任意継続」、「国民健康保険」、「家族の健康保険(被扶養者)」の3つの選択があります。これらの違いについて、まず確認しておきましょう。

1.健康保険任意継続

次の1、2の要件を満たす場合は、継続してこれまで会社で加入していた同じ健康保険の被保険者となることができます。これを「任意継続被保険者」と言います。

任意継続被保険者になると、原則として在職中と同様の保険給付を受けることができます。ただし、任意継続被保険者であることを理由に、傷病手当金や出産手当金を受けることはできません。※資格喪失後の継続給付は要件に該当していれば可能です

【任意継続被保険者になるための要件】

1.資格喪失日の前日(=退職日)までに継続して2ヵ月以上の被保険者期間があること

2.資格喪失日から20日以内に申出の手続きを行うこと

上記の要件に該当していても、任意継続被保険者となれるのは75歳未満の方となります。

2.国民健康保険

国民健康保険は、自営業者やフリーランス等をはじめ、他の医療保険制度(被用者保険、後期高齢者医療制度)に加入されていない全ての方を対象とした医療保険制度です。

勤め先の健康保険にあった「傷病手当金」や「出産手当金」の給付制度はありません。ただし、出産時に支給される「出産育児一時金」は受けられます。

申請については、退職後14日以内にお住まいの市町村の国民健康保険窓口で行います。

3.家族の健康保険の被扶養者

当面は仕事をする予定がない場合や、収入があってもアルバイト等で一定額以下となる場合、ご家族が加入している健康保険に「被扶養者」として加入する方法があります。

お勤めされている方(被保険者)の勤務先を通じて、ご相談ください。

被扶養者の範囲は、被保険者の配偶者(内縁を含む)、子、孫、兄弟姉妹、父母、祖父母であれば、同居していなくても対象になりますが、伯叔父母、甥、姪などの親族や、内縁関係の配偶者の父母や子は、同居していることが要件です。

被扶養者として認定されるには、主として被保険者の収入により生計を維持されていることが必要です。年収要件については、扶養に入る時点からの見込みの年収が130万円(60歳以上または障がい者の場合は180万円)未満であること。かつ、被保険者と同居している場合は、収入が被保険者の収入の半分未満、別居している場合には、被保険者からの仕送り額未満であることも必要です。詳しくは被保険者の健康保険組合等にてご確認ください。

すぐ転職するとき・定年後再雇用の場合は?

退職後、新しい会社へ転職される方も少なくありません。1日の空白もなく、すぐに転職される場合は、転職先で健康保険・厚生年金保険の手続きを行ってもらうようにしましょう。

定年退職後、同じ会社で継続雇用される場合、社会保険の加入基準を満たす雇用条件で働くときは引き続き健康保険に加入します。給与が下がる場合、「同日得喪」の手続きを行うことで、随時改定を待たず再雇用後の給与に見合った保険料に見直すことが可能になります。

退職後の保険料どうやって決まる?

被扶養者になれる場合を除くと、任意継続にするか国民健康保険にするか、いずれかの選択になります。

医療費にかかる自己負担(70歳未満は3割)も同じですので、これに関しては、毎月納める保険料などを比較の上、低い方を選択するのが妥当です。

そこで気になるのが保険料はどうやって決まるのか?ということではないでしょうか。

国民健康保険については、前年1月~12月の所得、加入者数、年齢(40歳~64歳の方は介護分が加算)で計算されます。ザックリ言えば、前年の所得が高く、家族が多ければ、国民健康保険料は高くなります。

具体的な保険料については、お住まいの国民健康保険窓口にご相談されるか、自治体が運営するサイト等で確認するのがよいでしょう。

なお、事業所の倒産・解雇、雇い止め等の会社都合により退職した場合、国民健康保険料を軽減する制度が設けられているため、任意継続の保険料より安くなる場合があります。市町村の窓口で確認ください。

一方、任意継続被保険者については、退職時の標準報酬月額と加入していた健保組合の被保険者の標準報酬月額の平均額と比べ、原則として少ない額となります。

協会けんぽの任意継続被保険者の標準報酬月額は、健康保険法により

(1) 資格を喪失した時の標準報酬月額
(2) 前年(1月から3月までの標準報酬月額については、前々年)の9月30日時点における全ての協会けんぽの被保険者の標準報酬月額の平均額を標準報酬月額の基礎となる報酬月額とみなしたときの標準報酬月額

のどちらか少ない額と規定されています。

このため、毎年度(2)の額が、任意継続被保険者の標準報酬月額の上限となります。※現在、平均標準報酬月額は30万円

例えば、退職時まで給与(標準報酬月額)が50万円であった場合でも、協会けんぽで任意継続をする場合は、標準報酬月額が30万円(×保険料率)になる、ということです。

ただし、任意継続被保険者になると、これまで半分会社が支払ってくれていた分も自分で支払う必要が生じるため、単純にいうと2倍になります(上限あり)。

協会けんぽ東京支部の場合、35,460円(令和5年3月分の料率適用、40歳以上の介護保険料含む)が上限となります。

高い給与を受け取っていた方は、国民健康保険よりも低くなることが多いので、両者を比較検討して選択するのが一番と言えます。

任意継続は最長2年間加入することができ、原則として保険料は変わりません。

ここで注意したいのが、協会けんぽではなく、組合管掌健康保険に加入していた場合。

2022年1月施行の健康保険法の一部が改正され、任意継続被保険者制度の取り扱いが変わりました。

この内容については、こちらのエントリ(任意継続被保険者制度の改正2つのポイント)でご確認ください。協会けんぽの方も、関連する内容があります。

まとめ

会社を退職することが決まったら、早めに退職後の健康保険についても対応を検討しておくと安心です。

基本的に3つの選択肢がありますが、家族の被扶養者になれる場合を除き、任意継続か国民健康保険かいずれかを選択することになります。

その際のポイントとなるのが、保険料の支払額です。

任意継続の手続きは、退職後20日以内と決まっていますので、書類の入手や保険料の支払い方法など事前に確認しておきましょう。

なお、75歳になると職業等にかかわらず、原則として後期高齢者医療制度に移行します。

執筆者プロフィール
佐佐木 由美子

社会保険労務士、執筆家、MBA。グレース・パートナーズ株式会社代表。働き方、キャリア&マネー、社会保障等をテーマに経済メディアや専門誌など多数寄稿。

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