定年前後の働き方大全100

発売中

詳細はこちら
ライフ

社労士の資格取得を目指した理由と経済的自立について

ライフ

こんにちは、佐佐木 由美子です。

私は物心がつく頃から、ずっと女性の経済的自立に関心を持ち続けていました。

それは、自分が自由に生きるために、経済的な自立が不可欠だと考えていたからですが、それだけではありません。

女性にとって閉塞感のある、暮らしにくい社会に強く疑問を感じていたからです。

例えば、「男は仕事、女は家庭」というような性別役割分担意識が根強く、ひと昔前まで女性が一生涯仕事を持ち続けることは、相当覚悟が要るような雰囲気がありました。

やりたい仕事があってもなかなか自由に選べなかったり、働けたとしても結婚・出産で辞めざるを得なかったり、両立することも女性に負荷が多すぎて厳しかったり……そして一度、仕事を手放してしまうと、再就職も難しい。経済力がないと、どうしても弱い立場になってしまいます。

個々人が自分らしく人生を生きるために、さらにこの国の在り方を変えていくためにも、多くの女性が経済的に自立することがとても大事だと思っていました。

そのために、自分に何ができるのだろう?ということを、漠然と考えてはいたものの、答えは見い出せません。まず、私自身が経済的に自立すること。これが最重要課題でした。

なぜ社会保険労務士の資格取得を目指したのか

日本の有名大企業を就職先に目指す学生が圧倒的に多い中、私は当時、まったく主流ではなかった(新卒採用自体が少ない)外資系企業に就職しました。総合職として入社できるため、日本企業よりも活路が見出せると思ったのです。

そして配属先の直属の上司が、社会保険労務士の資格を持っている女性でした。そこで初めて、通称「社労士」という国家資格があること知りました。

そのときは、まさか自分が社労士を目指すことになるとは考えてもいませんでした。

社労士の主な仕事は、法律に基づく人事労務管理等の指導や労働・社会保険諸法令に基づく手続きなどです。華やかな仕事とは対極にあるような世界とも言えます。

しかし数年後、自分のキャリアに行き詰まり、模索していたときに、社労士の大いなる可能性に気付いたのです。社労士の資格があれば、女性の経済的自立に役立つ仕事ができるかもしれない!と。

結婚・出産を機に仕事を辞めてしまう人が当時はまだ多かったのですが、雇用環境が改善できれば、復帰して働き続けることができる。それは女性の経済基盤を維持することにつながります。(男性の長時間労働を是とする働き方にも問題はありますが)

育児に限ったことではありませんが、柔軟な働き方の選択肢があれば、個人のペースに合わせて仕事を続けることが可能になります。社労士の関与できる範囲は幅広く、主流の分野ではありませんでしたが、「これだ!」と思いました。

そこから法律の勉強を始めました。社労士事務所に転職し、実務の世界に飛び込んでみると現実はシビアなことも痛感しました。しかも、試験の結果は不合格……

2年目もわずか1点差の足切りに泣き、心が挫けそうになりました。

しかし、私の中には目指すべきビジョンがあり、熱い想いだけは人一倍ありました。

あと1年だけ頑張ってみよう、それでダメなら別の道もある。そう自分を奮い立たせて、勉強と仕事に取り組みました。

そして3年目、ようやく合格通知を手にしたのです。

社労士の開業は大きなチャレンジ

何の勝算もなく、顧客ゼロの状態から事業を立ち上げました。

でも、不思議なことに、それほど深刻な不安はなく、むしろワクワクしていたようなところがあったかもしれません。開業資金はほとんどかからず、パソコンなど必要最低限の設備で始められたことも助かりました。

とはいえ、当たり前ですが、夢だけでは食べていけません。資格はあっても、営業経験は皆無。広い海原に、小さなボートで漕ぎだしたようなものです。

まず、私自身がビジネスで経済的に自立することは重要な課題です。これは大きなチャレンジでもありました。

会社勤めをしていれば、成果がなくとも給与は必ずもらえます。しかし、自分でビジネスをする以上は、成果を上げるしか方法はありません。試行錯誤の日々でした。

たったひとり、小さなボートで漕ぎだした冒険の先には、幸運なことに、様々な出会いがありました。

少しずつ事業は軌道に乗り始め、私自身も経済的に自立できるようになりました。そして、ようやく当初思い描いていたような仕事が、微力ながらできるようになったのではないかと思っています。

経済的自立は大事なテーマ

仕事はいつも順風満帆であればよいのですが、突然事業が傾き職を失うリスクもあれば、人間関係の難しさ、健康面や家族のこと、ライフイベントなど、様々な問題が複雑に絡み合っています。

働くことと生きることは、表裏一体です。

一度仕事から離れて長期のキャリアブレイクがあると、再就職へのハードルは上がります。そこを乗り越えても、自立した状態を維持し続けることは、多くの人にとって課題です。

人生が長期化していく今後においては、ますます大きなテーマになっていくでしょう。

ただ自立できればよいというわけではなく、一人ひとりが自分の価値観に基づいた働き方ができることが大事なことです。

そして、いつか私たちは年を重ねて、引退するときが訪れます。

そうなると、年金収入やこれまでの資産等を柱として生活を支えていくことになります。

経済的な自立というと、現役で働いているイメージが強いかもしれませんが、労働収入だけでなく、年金収入や保有する資産等で暮らしていけることも、立派な経済的自立だと考えています。

努力や工夫、知恵を絞らなければ、そうした状態を手に入れることはできません。

さらには、そうしたお金をどのように使っていくか、も大事なことで、収支がうまくいくように家計管理を行っていくことも自立には欠かせないスキルです。

経済的自立に関して、人それぞれ感じるイメージは違うかもしれません。

私が思う経済的な自立とは、ただお金を稼ぐことだけを意味するものではありません。

自分の人生を取り戻し、自分の意思で自由に生きることです。

そして、自分らしく幸せに生きることにつながっているものだと思います。

だから、どんな働き方をするのか、とても大切になってくると思うのです。

経済的な自立と同じくらい、精神的な自立も大事なこと。これらは密接に関わっています。

女性の経済的自立に関心を持ち続けていた私としては、世代を問わず経済的に自立する女性が増えていくことを心から願っていますが、本来は男女問わず、すべての人にとって経済的自立は大事なテーマだと考えています。

ただ、個人の価値観はそれぞれです。家族やパートナー等と話し合って、うまく役割分担をしていたり、様々な事情や自らの意思で仕事から距離を置いていたりする場合もあるでしょう。個人が大事にするもの、幸せの在り方は、尊重されるべきものだと思っています。


私自身は、女性の経済的な自立という問題意識から、上述のとおり社労士の資格を活かして、これまで雇用環境の改善などに取り組んできました。

ただ、働き方に関して言えば、女性だけに優しくすればよいものではなく、男女ともに柔軟な仕組みを採り入れることが大事だと考えていますし、育児休業等に関しても希望する男女が利用できるようにすべきものだと考えています。

働き方に関する無意識の思い込みや、個人に内在するメンタルブロックを外していくことも大切なことです。

そして、女性をはじめ多様な人々が参画でき、チャンスを掴むことができる、多様性が認め合える社会になったら、この国はもっと暮らしやすくなると思うのです。

遠い道のりかもしれませんが、希望はあります。

それは、私たち一人ひとりに委ねられているのではないでしょうか。

執筆者プロフィール
佐佐木 由美子

社会保険労務士、執筆家、MBA。グレース・パートナーズ株式会社代表。働き方、キャリア&マネー、社会保障等をテーマに経済メディアや専門誌など多数寄稿。

ワークスタイル・ナビをフォローする
シェアする
ワークスタイル・ナビをフォローする
佐佐木 由美子のワークスタイル・ナビ
タイトルとURLをコピーしました