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「子の看護休暇」とは?ポイントを理解して活用を

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こんにちは、佐佐木 由美子です。

子育てをしながら働くうえでの心配事といえば、子どもが病気になったとき、ではないでしょうか。

「熱が出た」「けがをした」・・・・・・保育園からいつ呼び出しを受けるかわかりませんし、病気のときも病児保育の預け先が見つからず困ってしまうケースは少なくありません。

そうしたときに活用したいのが「子の看護休暇」です。

子の看護休暇とは?

子の看護休暇とは、「負傷し、又は疾病にかかった子の世話又は疾病の予防を図るために必要な世話を行う労働者に対し与えられる休暇」です(育児・介護休業法第16条の2、3)。

「疾病の予防を図るために必要な世話」とは、子に予防接種又は健康診断を受けさせることをいい、予防接種には予防接種法に定める定期の予防接種以外のもの(インフルエンザ予防接種など)も含まれます。

これは労働基準法第 39 条の規定による年次有給休暇とは別に与える必要があります。

子の看護休暇は、子どもが病気やけがの際に休暇を取得しやすくし、子育てをしながら働き続けることができるようにするための権利として位置づけられています。

なお、子の看護休暇の対象となる子どもとは、原則として小学校就学前の子を指します。

子の看護休暇のポイントチェック

以下に、子の看護休暇について知っておきたいポイントをまとめました。

子の看護休暇の対象者は?

子の看護休暇は、正社員に限らず、契約社員、派遣社員、パートタイマー、アルバイトなどすべての労働者を対象としています(日々雇入れられる者を除く)。

ただし、次のような労働者について子の看護休暇を取得することができないこととする労使協定があるときは、事業主は子の看護休暇の申出を拒むことができます。拒まれた労働者は、子の看護休暇を取得することができません。

(1)雇用された期間が6か月に満たない労働者

(2)1週間の所定労働日数が2日以下の労働者

(3)時間単位で子の看護休暇を取得することが困難と認められる業務に従事する労働者※

  ※1日単位で子の看護休暇を取得することは可能

上記に該当する人は、職場の労使協定について確認してください。

ちなみに、労使協定において、「配偶者が専業主婦(夫)である労働者等について子の看護休暇の申出を拒むことができる」などとすることはできません。

どのくらい取得できる?

小学校就学前の子を養育する労働者は、事業主に申し出ることにより、1年度において5日(その養育する小学校就学の始期に達するまでの子が2人以上の場合にあっては10日) を限度として、子の看護休暇を取得することができます。

「1年度において」の年度とは、事業主が特に定めをしない場合には、毎年4月1日から翌年3月31日となります。

子の看護休暇は、「1日単位」又は「時間単位」で取得することができます。

2021年1月に育児・介護休業法が改正され、それまでの「半日単位」から「時間単位」での取得ができるようになりました。

就業規則がアップデートされていない企業では、半日単位のままになっているケースもあるのでご注意ください。

子の看護休業中の給与の取り扱いは?

子の看護休暇中における給与の支払いについては、法律で特に定められていません。

労使の話し合いによりますが、就業規則等において定められているのが一般的です。

中小企業においては、無給とされているケースが多いと言えます。有給で休みたい場合は、年次有給休暇を取得する方法もあります。

子の看護休暇の取得に証明書類は必要?

会社は、労働者の申出に対して、負傷や病気にかかっている事実や予防を図るための必要な世話を行うことを証明する書類の提出を求めることができます。

ただ、子の看護休暇は、介護休業と異なり、休暇が取得できる負傷や疾病の種類や程度に特段の制限はありません。

たとえば、風邪による発熱など短期間で治る病気であっても、労働者が必要と考える場合には申出ができます。

このため、申出に係る子の負傷又は疾病の事実を証明する書類としては、必ずしも医師の診断書等が得られない場合等もあります。

そうした場合、購入した薬の領収書等により確認するなど、運用については会社側も柔軟な取扱いをすることが求められます。

東京都の男女雇用管理に関する調査結果

ここで、東京都産業局が2023年3月に公表した企業における男女雇用管理に関する調査から、子の看護休暇に関する結果の一部をご紹介しましょう。

子どもの看護休暇制度の規定の有無についてたずねたところ、「規定あり」と回答した事業所は87.1%、「規定なし」は 10.7%。

業種別にみると、「宿泊業、飲食サービス業」(73.7%)、「不動産業、物品賃貸業」(73.3%)、「運輸業、輸送業」(73.2%)で「規定あり」の割合が低く7割前半となっています。

規模別では、「1,000 人以上」では 96.0%である一方で、「30~99 人」では 77.3%となっています。

本来、子の看護休暇は、あらかじめ制度が導入され、就業規則などに記載されるべきものです。しかし、就業規則の作成義務のない小規模な事業所等もあるため、きちんと制度化されていない実態もあるということでしょう。

子の看護休暇における制度の有無

出所:令和4年度「職場のハラスメント防止への取組等 企業における男女雇用管理に関する調査」東京都産業局

また、子どもの看護休暇の「規定あり」と回答した事業所(n=527)に、看護休暇期間中の賃金の有無と休暇取得単位についてたずねたところ、賃金の支給がある事業所は 34.3%(全額支給(27.3%)+ 一部支給(7.0%))、一方、支給のない事業所は 60.7%となっています。

子の看護休暇制度については、子育て支援の機運もあって、近年は給与支給を検討する企業が徐々に増えているように感じます。

子の看護休暇における賃金の有無

出所:令和4年度「職場のハラスメント防止への取組等 企業における男女雇用管理に関する調査」東京都産業局

事業所調査の内容については、こちらのリンクから詳しくご確認いただけます。

まとめ

子の看護休暇については、利用されている職場とそうでない職場があるように感じます。

周知が十分になされてないこともあるかもしれませんし、無給の場合は、年次有給休暇から優先して取得するケースも考えられます。(どちらを選択するかは、本人の自由です)

子育てをしながら働き続けることができる権利として、子の看護休暇があることはぜひ覚えておいていただきたいと思います。

子の看護休暇は、法律上は小学校就学前の子を対象としていますが、子育てをしながら働くする男女が利用できるものです。

近年は男性の育児休業が注目されていますが、「産後パパ育休」のみならず、あらゆる両立支援策に対して、男性がもっと利用しやすい雇用環境が広まるよう、周知・啓発を推進していくことは大切だと考えます。

執筆者プロフィール
佐佐木 由美子

社会保険労務士、執筆家、MBA。グレース・パートナーズ株式会社代表。働き方、キャリア&マネー、社会保障等をテーマに経済メディアや専門誌など多数寄稿。

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