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「しあわせは食べて寝て待て」から考える雇用問題

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こんにちは、佐佐木 由美子です。

今シーズンお気に入りのドラマがあります。

それは、桜井ユキさんが主演の「しあわせは食べて寝て待て」。

タイトルもいいですね。

ここで簡単にストーリーの概要を。

主人公の女性、麦巻さとこは、一生つきあわなくてはならない病気にかかったことから生活が一変。

体調的にフルタイムの仕事が厳しいことから会社を辞め、新しい住まい探しを余儀なくされます。そして、ひょんなことから出合ったのが築45年、 家賃5万円の団地。

隣に住む大家さん(加賀まりこ)と、訳あり料理番(宮沢氷魚)を通じて、旬の食材を取り入れた食事で体調を整える「薬膳」と出会い、ドラマは進展していきます。

毎回、美味しそうな薬膳料理が出てくるのも楽しみで、心がほっこりします。

一方、健康や仕事、住まい、お金、人間関係、将来設計・・・と誰もが考えてしまう問題もドラマでは丁寧に描かれています。

ドラマ設定では、主人公は週4日のパートで、質素に暮らしていますが経済的にはギリギリな状態。38歳、独身で、母親とも折り合いが良いとは言えません。

病気になるまで、主人公はむしろキャリア女子で、それなりの企業に勤務してマンションの購入を考えるほど経済的には自立していました。

しかし、これまでのように十分に仕事ができなくなり、同僚に迷惑をかけることへの後ろめたさやこれじれた人間関係に思い悩み、会社を退職してしまいます。


私がモヤモヤと感じてしまうことは、パートタイマーで生計を立てざるを得ないという問題です。

なぜ、フルタイムで働くことができないと、いわゆる非正規雇用となり、給与の激減を受け入れざるを得ないのか。

週4日勤務できるのであれば、週休3日制の短時間正社員といった選択肢もあってよいのではないか。

パートタイマーは一般的に時給制ですが、年末年始やゴールデンウィークなどで稼働日が減ると労働時間も減ってしまい給与が下がります。これは日々の生活に直結します。

一方、月給制であれば、労働時間が前後しても経済的には安定します。

しかし、フルタイムで働けないなら、正社員ではなくパート・アルバイトで、と雇用形態が変わってしまうのが、今の現実社会ではよく行われていること。

もっとも、週1~2回、1日2~3時間など、部分的な働き方であれば、働いた分だけ支払われる時給制という考えは妥当といえるでしょう。

一方、何等かの事情でフルタイムでは働くことはできないものの、生活の主体を担っている人において、すべて同じように取り扱ってよいものか。

今まで以上に、そうした人たちは増えていくでしょう。

人手不足が加速している労働供給制約社会において、雇用の在り方をもっと真剣に考えなくてはいけないのではないか、と強く感じます。

従来の正社員像(フルタイム+残業も含む)に捉われ、100%(以上)会社にコミットできなければ、非正規で労働条件は下がって当然、といったやり方では、いずれ立ち行かなくなります。

それに、生活できるか否かのギリギリの給与水準では、将来の老齢年金を考えても低年金は避けられず、生活不安はさらに高まってしまいます。

もっと柔軟で多様な働き方が、適切な労働条件のもとで認められていくことは、これからの社会にとって非常に大事になってくると思います。

同一労働同一賃金や社会保障における問題とも密接に関わることですが、ドラマを見ているとそうしたことまで考えてしまう自分がいます。

さらに言えば、仕事と治療の両立支援も大きな課題。

この話をし始めると、また長くなってしまいそうなので、別の機会に譲りますが…

主人公さとこのしあわせを切に願いつつ、同時に雇用、社会保障の問題について考えてしまうのは、仕事柄かもしれませんね。

ただ、そんなことを言っていたら、このドラマストーリが成り立たないこともわかってはいるのですが。

執筆者プロフィール
佐佐木 由美子

社会保険労務士、文筆家、MBA。グレース・パートナーズ株式会社代表。働き方、キャリア&マネー、社会保障等をテーマに経済メディアや専門誌など多数寄稿。

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