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社会保障制度ってなに?基本的なポイント

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「社会保障制度」という言葉を耳にすることはあるかと思いますが、それは何?と聞かれたらうまく説明することはできますか?

社会保障制度とは?

簡単に言えば、社会保障制度は国民の安心や生活の安定を支えるセーフティネットです。

具体的には、「社会保険」、「社会福祉」、「公的扶助」、「保健医療・公衆衛生」の4本柱で構成されていて、人々の生活をゆりかごから墓場まで生涯にわたって支えるものとされています。

社会保険

病気やけが、出産、死亡、老齢、障害、失業など生活の困難をもたらすいろいろな事故に遭遇した場合に一定の給付を行い、人々の生活の安定を図ることを目的とした、強制加入の保険制度。~医療保険、介護保険、年金保険、雇用保険など。

社会福祉

障がい者、母子家庭など社会生活を送る上で様々なハンディキャップを負っている人々が、そのハンディキャップを克服して安心して社会生活を営めるよう、公的な支援を行う制度。~障がい者福祉、高年齢者福祉、児童福祉など。

公的扶助

生活に困窮する人々に対して最低限度の生活を保障し、自立を助けようとする制度。~生活保護制度など。

保健医療・公衆衛生

人々が健康に生活できるよう様々な事項についての予防、衛生のための制度。~医療サービス、疾病予防、母子保健、食品や医薬品の安全性確保など。

ご覧のとおり、生活全般のリスクを補うもので、実に壮大な制度の体系と言えます。

こうした制度が出来上がった背景について、見ていきましょう。

1947(昭和22)年、日本国憲法第25条において生存権、社会権が保障されました。

これに基づき1950(昭和25)年の社会保障制度審議会による「社会保障制度に関する勧告」の中で、現行制度の基本的な考え方が明確に示されました。

以下、本文の一部を紹介します。

…いわゆる社会保障制度とは、疾病、負傷、分娩、廃疾、死亡、老齢、失業、多子その他困窮の原因に対し、保険的方法又は直接公の負担において経済保障の途を講じ、生活困窮に陥った者に対しては、国家扶助によって最低限度の生活を保障するとともに、公衆衛生及び社会福祉の向上を図り、もってすべての国民が文化的社会の成員たるに値する生活を営むことができるようにすることをいうのである。…(略)

社会保障制度に関する勧告から抜粋

かなり難しい(古めかしい)言葉で書かれていますが、要するに、社会保障制度は「自助」が基本、でも自助だけではリスクを防ぎきれない場合は「共助」で補完、それでも困窮してしまうときは「公助」で支える、ということです。

人間ですから、健康に気を配っていても病気で働けなくなることや、一人では背負いきれないリスクに遭遇することもあるかもしれません。それをすべて自己責任だと言い切ってしまったら、個人の生活が壊れてしまい、結果として社会全体のリスクが大きい。

つまり、こうしたリスクをできる限り小さくするために、社会全体でリスク回避を共同化するために、社会保障制度があると言えます。

すべて自己責任で一度失敗したら立ち上がれない、という社会はあまりにも残酷です。

いざというときのセーフティネットがあるから、私たちはリスクを冒して果敢にチャレンジすることができるのではないでしょうか。

その点、セーフティネットは私たちの挑戦、潜在能力の開発・発揮を支えるものと言えるかもしれません。現に、社会保険の中には、教育を支援する仕組みもあります。

社会保障はなぜ難しいのか?

それにしても、社会保障の全体像を理解するのは、とても複雑で難しいと感じています。

私自身は、社会保険労務士として社会保険や雇用にまつわる仕事をしていますし、そもそも国家試験に合格するために法律の勉強もしたので、社会保険の分野であれば一定の理解はしていると言えます。

しかし、社会保障は壮大な制度の体系であって、全体を理解するにはマクロ経済と同時にミクロの部分、さらには政治、雇用問題、家族政策、地域政策など様々な分野における包括的な視野が求められます。あまりにも膨大で複雑すぎるのです。だから難しい。

たとえば、社会保障給付費をみると、121兆円5,408億円という桁外れのお金が動いています。これは対GDP 比でみると22.16%にものぼります。社会支出は125兆4,294円、1 人当たりの社会支出は99 万2,000 円です。(国立社会保障・人口問題研究所「2018年度社会保障費用統計」概要)

こうしたお金は、国民や企業からの税金や保険料という形で集められます。それが年金や手当などの現金で国民に給付され、一方で医療や介護、保育のようなサービスを提供するところへ支払われます。

医療や介護、保育サービスは、自治体が運営する場合もあれば、民間企業や医療法人、社会福祉法人などもあります。これらに関わる様々な産業、たとえば医療機器やヘルスケア、健康産業などの産業分野にも関わってきますし、それに関連して大きな雇用も生まれます。

それに、社会保障の受益者は、赤ちゃんからお年寄りまで、日本全国津々浦々にいるわけです。

ちょっと社会保障に手を加えるだけで、地方経済や雇用などにも大きな影響を与えます。政治判断を伴う場面もあるでしょうし、国民感情への配慮もしなければなりません。

これらはマクロ的な視点ですが、個人ベースで考えたとき、また別の景色が見えてきます。

子供が生まれたが、保育所が空いていない。親が病気になったが、介護はどうするか。会社をクビになって生活が立ち行かない。育休中の生活費をどうすればいいか。家族が障がい状態になった。引退後の年金は……?

どれをとっても、当事者にとっては大事な問題です。こういったミクロの視点での社会保障も必要になってくるのです。

ですから、マクロとミクロの視点が乖離する特質的な全体像を捉えて、日本の社会保障制度を語ることは、途方もなく難しいことだと言えます。


そうなると、人は合理的な選択として、あえて関心を払わないようにする、知らなくていいものだ、と思ってしまうところがあります。

これは合理的無知と言われるもの。そんな難しいこと、解決し得ないようなことに時間を割くのはもったいない、と思ってしまうのも不思議ではありません。なぜなら、私たちは毎日があまりにも忙しいから。目の前にあることに精一杯だから、余裕がありません。

ただ、個人的には、なかなか答えが出ないとしても、途方もなく大きな問題であったとしても、社会保障制度はとても大事なことなので、考えることを放棄したくはありません。

それに、社会保障は私たちの働き方にも影響を与えています。働き方が多様化しているからこそ、考えていかなければならない課題がたくさんあります。

ということで、社会保障制度の基本的な考え方についてお伝えしましたが、今後も引き続き、ミクロな視点(時々マクロな視点)から発信していきたいと思います。


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