社会保険とお金

産休・育休中の社会保険、役員はどうなる?

社会保険とお金

こんにちは、佐佐木由美子です。

女性の代表取締役や役員の方から、時々出産に関するご相談をいただくことがあります。

ご自身や夫婦で法人を設立し、役員と言えども自分の役回りが大きく、長期間の休業は難しい……といったケースや、従業員から取締役に抜擢された後のケースなどいろいろですが、役員の場合、社会保険に関する取扱いが従業員とは大きく異なることがあります。

従業員の産休・育休における社会保険料と給付金

まず、従業員の場合に受けられる社会保険(健康保険・厚生年金保険)と雇用保険におけるお金周りの支援について確認しておきましょう。

1.産休中の社会保険料の免除

2.産休中の出産手当金(原則給与が受けられないとき)

3.出産育児一時金(出産したら一児につき原則42万円)

4.育休中の社会保険料の免除

5.育休中の育児休業給付金(原則給与が受けられないとき。一定要件あり)

この他に、産休・育児休業終了時の月額変更届や養育期間の特例措置などもありますが、すべての方に該当するわけではありません。

金額としてはかなり大きく、こういった保障があることで安心して休業できる側面があります。

役員の産前産後休業中における社会保険

社会保険については、役員も役員報酬を受けていれば、従業員と同じように加入して被保険者となります。

産休中の社会保険料免除

産前産後休業期間中(産休開始月から産休終了日の翌日の属する月の前月(産休終了日が月の末日の場合は産休終了月)まで)の健康保険・厚生年金保険料は、役員も従業員と同様に免除を申請することができます。

この申出に関しては、産休中における役員報酬の有無は問いません。労務に従事しなかったことがポイントになります。

産休中に社会保険料が免除された期間についても、保険料を納付したものとして老齢年金の受給額に反映されます。

産休中の出産手当金

出産手当金は「出産のため会社を休み、その間に給与等が支払われないときの生活保障」であるため、産休中も変わらず役員報酬を受けている場合は不支給となります。

役員報酬を支給しない場合は、出産手当金の対象となります。産休中の役員報酬を停止した場合は、取締役会議事録の写しなどを準備しておきましょう。添付書類については、加入している健康保険組合に確認ください。医師の証明は必要です。

きちんと手続きを行うことで、産前産後休業期間(産前42日(多胎妊娠の場合は98日)、産後56日のうち、妊娠または出産を理由として労務に従事しなかった期間)について、支給を受けることができます

産休期間を調べる場合は、こちら(グレース・パートナーズ社労士事務所ページ)で簡単にチェックできます。

出産育児一時金について

妊娠4ヵ月(85日)以上の方が出産したときは、一児につき42万円(産科医療補償制度の対象外となる出産の場合は40.8万円(令和3年12月31日以前の出産は40.4万円))の出産育児一時金が支給されます。
※産科医療補償制度とは、分娩に関連して重度脳性麻痺となった赤ちゃんが速やかに補償を受けられる制度で、分娩を取り扱う医療機関等が加入する制度です。

なお、男性の役員において、扶養している家族が出産した場合は「家族出産育児一時金」を申請することができます。(名称が異なるだけで内容は出産育児一時金と同等です)

フリーランスの場合

2019年4月から、フリーランスや個人事業主、つまり、「国民年金第一号被保険者」が出産した場合は、出産予定日または出産日が属する月の前月から4カ月間の国民年金保険料が免除されます。この場合は自分で申請することになるので、手続きを忘れないようにしましょう。

多胎妊娠の場合は、出産予定日または出産日が属する月の3カ月前から6カ月間の国民年金保険料が免除されます。

産前産後期間の免除制度は、「保険料が免除された期間」も保険料を納付したものとして老齢基礎年金の受給額に反映されます。

また、「出産育児一時金」についても、妊娠4ヵ月(85日)以上の方が出産したときは、一児につき42万円(産科医療補償制度の対象外となる出産の場合は40.8万円(令和3年12月31日以前の出産は40.4万円)が支給されます。

ただし、「出産手当金」の制度は原則として設けられていません。

役員の育児休業中における社会保険

役員は労働者ではないため、労働基準法や育児・介護休業法の適用を受けません。

健康保険法及び厚生年金保険法における育児休業は、育児・介護休業法に基づくものとなっているため、役員の場合は社内で育休として仕事を休んでいたとしても、健康保険・厚生年金保険においては保険料の免除を受けることができません。

実際に役員報酬をストップして休業していたとしても、その点は変わりませんので、くれぐれもご留意ください。

また、取締役や理事など役員の場合は、原則として雇用保険に加入できません。

したがって、雇用保険の被保険者を対象とした「育児休業給付金」も受けることができません。ただし、「兼務役員」として雇用保険に加入している場合を除きます。

「兼務役員」の場合

使用人兼務役員として、所轄ハローワークにおいて適切な手続きを行い、雇用保険に加入している場合は、従業員部分の給与については育児休業給付金の対象となります。

兼務役員の雇用保険については、以下の記事もご参照ください。

また、兼務役員の場合は、労働者としての身分も兼ねるため、育児休業中における社会保険料を申請することができます。詳しくは、加入する健康保険組合にご確認ください。

まとめ

会社の役員において、上記囲み部分の1~3、「産休中の社会保険料免除」と「出産手当金」「出産育児一時金」は対象となりますが、育休中の免除や給付金は対象となりません。

夫婦がそれぞれ被保険者本人になっているとき、「出産育児一時金」は、妻の加入している健康保険から本人としての給付を受けることになります。

近年は、男性役員が育児休業と称して育児のために仕事を休むケースも出てきていますが、社会保険においては男性役員も同様に社会保険料の免除を受けることはできません。なお、扶養している家族が出産した場合は「家族出産育児一時金」を申請することができます。

こうした制度は少々複雑なので、事前に理解をしたうえで、それぞれ計画を立ててもらえたらと思います。


執筆者プロフィール
佐佐木 由美子

社会保険労務士、エッセイスト。グレース・パートナーズ株式会社代表。働き方、キャリア&マネー、社会保障等をテーマに日経styleやダイヤモンド・オンライン等の経済メディア、専門誌に多数寄稿。

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