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社会保険とお金

40年に満たなくても大丈夫?60歳以降も働く人の「経過的加算」とは

社会保険とお金

こんにちは、佐佐木 由美子です。

「年金は40年払わないと、満額もらえない…」そんな言葉を耳にしたことはありませんか?

 特に、子育てや介護などで仕事から離れる期間が多くなりがちな女性の場合、「40年なんて到底ムリ…」「私の年金、大丈夫?」と心配される声も聞かれます。

しかし、60歳以降の働き方次第で、その不安は解消できるかもしれません。

20歳から国民年金は強制加入

1991年4月以降、日本国内に住む20〜60歳は、原則として国民年金に強制加入となりました。

20歳になれば学生であっても国民年金に加入することになりますし、たとえば育児や介護などで仕事から離れていた期間であっても、国民年金の被保険者となります。

このため、昔に比べると国民年金(基礎年金)については、40年間の加入期間を確保しやすくなったといえます。

ただし、学生納付特例や保険料免除を受けている場合、追納しなければ受け取れる年金は満額より少なくなるケースに注意したいところです。

将来受け取る年金額(老齢基礎年金)は、加入期間(月数)に応じて決まります。

20歳から60歳までの40年間(480ヵ月)保険料を全額納付した場合に、満額 (2025年度の場合、年83万1,700円、月あたり69,308円)が支給されます。

国民年金は20歳からカウントされますが、厚生年金は会社員や公務員などで働いた期間が対象となります。

たとえば、大卒で22歳から正社員として働き始めた場合、60歳まで働いても厚生年金の加入期間は38年。特に強制加入前の世代では、40年に届かないのは珍しくありません。

そうなると、老齢基礎年金は満額もらえないの?と思ってしまうかもしれません。

このとき知っておきたいのが、老齢厚生年金の「経過的加算」という仕組みです。

経過的加算が“差”を埋めてくれる

たとえば、60歳まで37年間加入していた人は、国民年金(老齢基礎年金)を満額受け取ることはできません。しかし、63歳までトータル「40年間」働いたらどうなるのでしょうか?

「40年だから満額もらえる」と思われるかもしれませんが、国民年金(老齢基礎年金)として受け取れるのは、あくまでも20歳~60歳までの期間が対象です。

つまり、基礎年金の額に反映されるのは60歳を迎えるまでの444ヵ月分となり、満額にはなりません。

では、60歳以降に働いた3年間分はどうなるのでしょうか?

現在の老齢厚生年金には、「経過的加算」という仕組みがあります。

これは、わかりやすく言うと、昔の制度と今の制度の差を調整するためのもので、基礎年金が満額でない人に、一定の上乗せがされる制度です。

要は、60歳以降も厚生年金に加入して働くことで、厚生年金に経過的加算が上乗せされ、差分を埋めてくれるのです。

経過的加算には一定の計算式があり、上記の63歳まで働く例で考えると、約6万3000円が厚生年金の経過的加算としてプラスされます(2025年度での試算)。

つまり、基礎年金が満額に達しないとしても、実質的にカバーされる仕組みが設けられているのです。

こうした仕組みがあることは、意外と知られていません。

安心材料になるのが、60歳以降も厚生年金に加入して働くことができる点でしょう。

パートなどの短時間勤務でも、週20時間以上などの条件を満たせば(勤務先によって条件は異なる)被保険者として、最長70歳まで厚生年金に加入することができます。

まとめ

20~60歳までの40年間、しっかりと国民年金保険料を納付していた、という人は案外少ないかもしれません。

特に、保険料免除や学生納期特例、保険料の未納期間があると、国民年金(基礎部分)のみでは満額とはなりません。

しかし、上記で述べたとおり60代で厚生年金保険に加入して働けば、不足していた期間を、後から埋めることができます。

人生100年時代のいま、60代の働き方が、あなたの年金に新しい選択肢と安心をもたらしてくれるといえるのではないでしょうか。

執筆者プロフィール
佐佐木 由美子

社会保険労務士、文筆家、MBA。グレース・パートナーズ株式会社代表。働き方、キャリア&マネー、社会保障等をテーマに経済メディアや専門誌など多数寄稿。

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