定年前後の働き方大全100

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これからの働き方に影響を与える3つの要因

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人生100年時代と言われる中、私たちのこれからの働き方に影響を与える要因には、どのようなものがあるでしょうか。

主に3つ、①人生の長期化、②テクノロジーの進化、③グローバリゼーションの進展、が挙げられます。具体的に見ていきましょう。

1.人生の長期化

まず一つ目の要因は、「人生の長期化」です。

戦後1947年、女性の平均寿命はわずか53.96歳、男性は50.06歳でした。それが1970年になると女性は74.66歳、男性は69.31歳に。さらに、直近2020年では、女性が87.74歳、男性は81.64歳と、世界でも例を見ない長寿化社会になっています(出所:厚生労働省「完全生命表」)。人生100年時代という話も、現実味を帯びてきました。


これだけ人生が長期化すると、当然ながら働く期間も長くなっていきます。

単純に、大卒で60歳の定年まで働く場合は38年でしたが、これからは定年が延びて(あるいは定年後の継続雇用やフリーランスなどで)10~15年程度は長くなっていくでしょう。つまり、50年以上働くことが将来的に普通になってくるということです。

かつては、新卒で入社して終身雇用というスタイルは一般的でしたが、それだけ長い間働くとなると、同じ組織でずっと働き続けることや、一つの仕事を続けることは、もはや現実的ではありません。世の中の変化は激しく、職業ニーズは時代と共に変化していきます。その変化スピードはもっと加速していくでしょう。

さらに、私たちも体力や能力も変化していきます。生産性をどう維持していくか、という課題もあります。熟練したスキル、経験に価値のある職業も確かにありますが、そういうものばかりではありません。となれば、アンラーニング、つまり今まで学んできたことを捨て、新たに学んで知識を得ていくことが求められてきます。

また、長寿化によって今後さらに介護と仕事の両立も課題になります。介護そのものはプロの力を借りるとしても、両立が可能である柔軟な働き方へのニーズは高まっていくでしょう。

2.テクノロジーの進化


二つ目の要因は「テクノロジーの進化」です。

コロナ禍を契機に、リモートワークが一気に普及するなど ICT の進化によって場所にとらわれない働き方が可能になりました。すでに、個人のライフスタイルを重視して、住む場所を変える人たちも出てきています。

テクノロジーの進化はビジネスの在り方にも影響を与えています。かつては、ビジネスに必要なインフラを持つことは、資金力のある大企業しかできませんでした。これが今では、個人でもビジネスに必要なインフラを調達することが容易になりました。

例えば、3Dプリンターがあれば大規模な製造機械がなくても、モノづくりが可能です。これはほんの一例ですが、個人や小規模な組織であっても、世界と渡り合えるビジネスを構築することが可能になってきています。そうなれば、組織に属さずに働くこと(起業やフリーランス等)もやりやすくなります。

またAI の精度が向上していることも見逃せません。例えばロボティクスによって、今後増加する介護人材の確保や、その他の産業で不足する労働力人口の減少を補ってくれることが想定されます。それは、新たな雇用も生み出す一方、今ある職業が失われていくことも意味しています。

オックスフォード大学のオズボーン博士は、AI の進展によって10年後に米国雇用者の47%が職を失われるという論文「雇用の未来」(THE FUTURE OF EMPLOYMENT: HOW SUSCEPTIBLE ARE JOBS TO COMPUTERISATION?)を発表し、当時大変な注目を集めました。

3. グローバリゼーションの進展


3つ目は、「グローバリゼーションの進展」です。

グローバリゼーションとは、ヒト・モノ・カネなどの移動が盛んになり、地球規模で一体化が進むことを言います。

アメリカではコールセンターが国内からインドへ移転する動きが広がっています。かつては、工場の海外移転が盛んに行われ、産業の空洞化が問題になっていました。しかし今後は、ホワイトカラーの人たちも海外のグローバル人材と競争していかなくてはいけなくなってくるということです。

例えば、人材派遣大手のパソナは、この11月からインドやベトナムなど海外の IT 人材を日本企業に業務委託で紹介するサービスを始めています。

国内では、すでに IT 人材の奪い合いになっているという実情がありますが、優秀な人材を国内で調達するとかなりコストがかかります。一方、インドやベトナムからは国内と比べ遥かに安く人材を調達することができるわけです。ちなみに、IT人材の需給キャップは、2030年には45万人に達する見通しとなっています。

これを実感したのが、顧問先での事例です。海外展開をしている事業で、欠員が出たためにネット上で求人募集を出したところ、海外から普通に応募があったというのです。決して大企業ではありません。小さな組織でも、ブランド力・信用があれば、こうしたことが現実になってきているということです。

完全リモートワークで業務のオペレーションが可能になれば、海外の人材に仕事を任せることも無理な話ではありません。優秀な人材であれば、日本人を優先する必要性は必ずしもありません。翻訳機能も進化しているので、言葉の障壁もさらに低くなっていくでしょう。そうなると、これまでは当たり前のように国内で日本人との採用競争に晒されていたものが、グローバルな人材競争になっていくということです。


これら3つの要因、①人生の長期化、②テクノロジーの進化、③グローバリゼーションの進展は、20代の若い人たちだけの話ではありません。

今40歳ぐらいの方でも、これからまだ30年程度の期間働くことを考えると、意識しておく必要があるだろうと考えます。

今後、あなたはどのような働き方をしていきたいですか?

執筆者プロフィール
佐佐木 由美子

社会保険労務士、執筆家、MBA。グレース・パートナーズ株式会社代表。働き方、キャリア&マネー、社会保障等をテーマに経済メディアや専門誌など多数寄稿。

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