こんにちは、佐佐木由美子です。
2024年5月に成立した改正雇用保険法では、人への投資を強化するため教育訓練やリスキリング支援の充実などに関する内容が盛り込まれました。
そのうちのひとつが、2025年10月1日から始まった「教育訓練休暇給付金」です。
このエントリでは、基本的な概要と、企業に求められる対応について取り上げます。
教育訓練休暇給付金とは?
教育訓練休暇給付金は、雇用保険の被保険者である労働者が離職することなく教育訓練に専念するに際して、自発的に休暇を取得して仕事から離れる場合に、その訓練・休暇中の生活費を保障するため、失業給付(基本手当)に相当する給付として賃金の一定割合を支給する制度です。
支給対象者は、雇用保険の一般被保険者であって、以下の要件をすべて満たすことが必要です。
支給対象者の要件
- 教育訓練休暇開始前2年間に12ヵ月以上の被保険者きかんがあること(原則として11日以上の賃金支払基礎日数がある月が対象)
- 休暇開始前に5年以上の算定基礎期間があること
所定給付日数は、雇用保険に加入していた期間に応じて決まります。
1日当たりの給付額については、年齢に応じて上限が定められています。


この給付金の対象となる休暇は、以下1~3の要件をすべて満たすことが必要です。
1.就業規則や労働協約等に規定された休暇制度に基づく休暇
2.労働者本人が教育訓練を受講するため自発的に取得することを希望し、事業主の承認を得て取得する30日以上連続した無給の休暇
3.次に定める教育訓練等を受けるための休暇
- 学校教育法に基づく大学、大学院、短大、高専、専修学校 又は各種学校が提供する教育訓練等
- 教育訓練給付金の指定講座を有する法人等が提供する教育訓練等
- 職業に関する教育訓練として職業安定局長が定めるもの (司法修習、語学留学、海外大学院での修士号の取得等)
会社が果たす役割は大きい
教育訓練休暇給付金を受けるためには、支給を受けようとする本人だけでなく、会社の対応も必要となってきます。
具体的な大まかな流れを確認しておきましょう。
①教育訓練休暇制度を就業規則または労働協約等に規定して、従業員に周知する。
②申し出を受けて、調整のうえ合意。本人から提出された教育訓練休暇取得確認票に必要事項を記載する。
③休暇開始日の翌日から起算して10日以内に休暇開始日の前日までの賃金支払い状況 等を記載した賃金月額証明書をハローワークに提出する。
④ハローワークから賃金月額証明票(事業主控え、本人手続用)及び教育訓練休暇給付金支給申請書が交付される。
⑤賃金月額証明票(本人手続用)及び教育訓練休暇給付金支給申請書を速やかに労働者本人に交付する。

このように、すべて従業員まかせではなく、賃金月額の証明など会社側のスムーズな対応が求められます。
会社が留意すべき事項
解雇や雇止め等を予定している従業員に対して、教育訓練休暇給付金の支給対象となる教育訓練休暇を取得させた場合、対象労働者は教育訓練休暇給付金を受けることができません。
また、解雇等を予定している従業員であるかどうか、教育訓練休暇開始時賃金月額証明書により確認することとなるため、虚偽の届出を行うと罰則の対象となる場合があります。
なお、教育訓練休暇を取得した労働者も含め、労働者を解雇等した場合一定期間、雇用関係助成金の支給を受けられなくなる場合があります。
そもそも、この教育訓練休暇給付金は、労働者が教育訓練に集中して取り組むために自発的に無給の休暇を取得する場合に支給されるものです。そのため、業務命令で休暇を取得させることは認められません。
休暇中は無給となりますが、社会保険料の免除は労使ともに受けられませんので、この点も留意しておくべきでしょう。
まとめ
このエントリでは、教育訓練休暇給付金の申請にあたって会社側に求められるポイントについて取り上げました。
ただ、現時点では、就業規則等に(給付金が申請できる内容の)教育訓練休暇制度を設けている企業が少ないのが実情です。
社会経済環境が大きく変化していく中で、企業と労働者個人の継続的な成長のために、ひとり一人がスキルや知識を身に着けておくことは、これからますます重要になります。
そうした支援の選択肢として、社内ニーズなども考慮のうえ、検討されてみてはいかがでしょうか。
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