働き方

女性活躍推進法改正で何が変わる?― 男女賃金差異の公表強化が示す、これからの働き方

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2025年6月11日に公布された「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律」により、女性活躍推進法(女性の職業生活における活躍の推進に関する法律)も改正されることになりました。

法改正というと、「企業は何をしなければならないのか」という実務対応に関心が集まりがちです。

もちろん、それは重要です。ただ、制度が変わるということは、働く側にとっても新しい材料が示されたということでもあります。

このエントリでは、今回の改正で何が変わるのかを整理しながら、それが私たちの働き方にどんな問いを投げかけているのかを考えてみたいと思います。

女性活躍推進法はこれからも「続く」ことに

女性活躍推進法は、2016年4月に10年間の時限立法として施行されました。

ただ、この10年で、男女間の格差は十分に解消されたと言えるでしょうか。

この図が示すとおり、長期的に見れば、男女の賃金差は徐々に縮小してきました。
しかし、男性を100としたときの一般労働者女性の所定内給与額をみると、「75.8」といまもなお一定の差を残していることがわかります。

出所:厚生労働省 令和6年版「働く女性の実情のポイント」概要より「賃金構造基本統計調査」をもとにした図

管理職に占める女性の割合も上昇はしているものの、なお課題が残ります。

こうした状況を踏まえ、法律の有効期限は2036年3月31日まで延長されました。

制度は一区切りを迎えたのではなく、引き続き取り組むべき課題として位置づけ直されたと言えるでしょう。

情報公表は「出す」から「読まれる」へ

今回の改正では、2026年4月1日から、常時労働者数101人以上の事業主に「男女間賃金差異」の公表が義務化され、あわせて「女性管理職比率」の公表も求められることになります。

これまでも、常時301人以上の事業主には「男女間賃金差異」の公表義務がありました。さらに「女性管理職比率」の公表義務が課されます。今回の改正は、これまでの枠組みを一段広げるものです。

女性がどれだけ採用されているかという入口だけでなく、どのポジションで働き、どの程度の処遇を受けているのかという実態が、より明確に示されることになります。

一定項目の情報公表そのものは、以前から行われていました。しかし、これからは「数字がある」という事実よりも、その数字が何を語っているのかが見られる段階に入ります。

なぜ差が生じているのか。
その背景にどのような雇用区分や昇進の仕組みがあるのか。
説明の言葉に、説得力はあるのか。

企業にとっては、算出方法の確認やデータの整備など、実務上の準備も必要になります。しかし、それ以上に問われるのは、要因と課題の分析を行い、数字の背景をどう説明するかという姿勢でしょう。

こうした数字と説明は、読み手に多くのことを考えさせます。

健康課題が「個人の問題」ではなくなる

今回の改正では、女性の健康上の特性への配慮が、法律上より明確に位置づけられました。こちらは公布日である2025年6月11日から施行されています。

月経や妊娠・出産、更年期といったライフステージに伴う体調変化は、働き続けるうえで無視できない要素です。それにもかかわらず、これまでは個人の問題として扱われがちでした。

事業主行動計画策定指針では、女性の健康課題に関わる取組例として、ヘルスリテラシー向上や相談体制整備などが示されています。

制度に明記されたことの意味は小さくありません。
それは、「配慮してよい」というメッセージが、公的に示されたということでもあるからです。

制度があるかどうかだけではなく、利用しやすい空気があるかどうか。そこに目を向けることも、今回の改正を読み解く視点の一つです。

管理職という指標と、その先にあるもの

女性管理職比率が公表義務となる背景には、意思決定層への参画が処遇や影響力と結びついている現実があります。指標としての意味は、確かにあります。

ただし、管理職になることがすべての人にとっての唯一の目標とは限りません。

専門性を深める道もあれば、家庭や介護と両立しながら働き続ける道もあります。治療と両立するために一時的にペースを調整する時期も、長いキャリアの一部です。

大切なのは、複数の選択肢が制度上だけでなく実態として存在しているかどうかです。

数字は入口にすぎない

今回強化される男女間賃金差異や女性管理職比率の公表は、企業の構造を映し出します。

しかし、その数字の背景には、総合職と一般職の区分、非正規雇用の割合、長時間労働を前提とした評価制度など、さまざまな設計があります。

数字はゴールではありません。
そこから問いを立てるための入口です。

自分が望む働き方は何か。
収入なのか、裁量なのか。
時間の余白なのか、安定なのか。
役職なのか、専門性なのか、それとも両立なのか。

制度が整うほど、比較はしやすくなります。
その一方で、何を選ぶかという問いは、より個人に委ねられていきます。

今回の改正は、女性活躍推進法を「企業の姿を見える化する法律」へと一段進めた改正とも言えるでしょう。

示された数字をどう読むか。
そこから何を選び取るか。

制度は問いを提示します。
その問いに向き合うのは、私たち自身です。

キャリアの途中にいる人も、これから一歩を踏み出そうとしている人も。
それぞれの現在地で、この数字の意味は少しずつ違って見えるはずです。

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