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社会保険とお金

共働き夫婦の子、健康保険はどちらの扶養に?

社会保険とお金

こんにちは、佐佐木 由美子です。

夫婦共働きで子どもが生まれるとき、特に夫婦の年収が同じくらいの場合、健康保険において夫婦どちらの扶養にすべきか悩んでしまいませんか?

2021年8月1日から、共働き夫婦における被扶養者の認定について、取扱い基準が明確化されました。

この内容を踏まえつつ、健康保険における被扶養者の考え方について解説します。

共働き夫婦の被扶養者の認定基準とは?

夫婦の両方が健康保険の被保険者であり、二人で家族を扶養する状態を「夫婦共同扶養」と言います。共同扶養だからと言って、夫婦でそれぞれ同じ子どもを扶養することは認められていません。いったい夫婦のどちらが子どもを扶養することになるのでしょうか?

夫婦共同扶養に関する被扶養者認定の基準が明確化される前まで、年収がほぼ同じ夫婦の子どもについては、保険者間でいずれの被扶養者とするか調整をする間、子どもが無保険状態となってしまうことが懸念されていました。

そこで、2021年8月1日から、夫婦共同扶養の場合における被扶養者の認定について通達が発出されました。

参考出所:「夫婦共同扶養の場合における被扶養者の認定について」(令和3年4月30日保保発0430第2号/保国発0430第1号)

現在においても、この基準で運用されています。早速、確認していきましょう。

夫婦とも被用者保険の被保険者の場合

被用者保険とは、会社等に雇用される従業員が加入する保険で、会社員が加入する組合管掌健康保険や協会けんぽ、公務員や私立学校の教職員等が加入する共済組合などを指します。

夫婦とも被用者保険の被保険者の場合、被扶養者とする人数にかかわらず、原則は被保険者の年間収入が多い方の被扶養者とします。

ここでいう年間収入とは、過去の収入、現時点の収入、将来の収入等から算出した「今後1年間の収入見込額」を指します(以下同じ)。

ただし、夫婦双方の年間収入の差額が年間収入より多い方の1割以内である場合は、届出により、主として生計を維持する者の被扶養者とします。つまり、届出ベースで夫婦いずれかを「生計を維持する者」として選択することが可能となります。

この場合、仮に妻の方が年間収入を比べると多い場合でも、子どもの生計を維持する者が夫であれば、夫の被扶養者となります。

実質的には、夫婦がそれぞれ加入する健康保険組合の福利厚生などを考慮して決めることが多いのではないでしょうか。

ちなみに、健康保険組合においては、被扶養者手続きにおいては独自のフォームや添付書類を求めることもありますので、事前に何が必要となるか確認してください。

かつては、年間収入が同程度という場合に、どの程度の収入差を指すか不明瞭でしたが、1割という定量的な基準が設けられたことで、判断がしやすくなりました。

夫婦の一方が国民健康保険の被保険者である場合

夫婦の一方が自営業やフリーランス等で国民健康保険の被保険者で、もう一方は協会けんぽや健康保険組合等の被用者保険に加入している被保険者の場合はどうなるのでしょう?

やはり、双方の収入で比較することになります。国民健康保険の被保険者については給与収入ではないので、「直近の年間所得で見込んだ年間収入」を算出します。

そして、被用者保険の被保険者は上記と同様に「年間収入」を基準として、両者を比べていずれか多い方を主として生計を維持する者とします。

被用者保険の場合、被扶養者の人数が増えても健康保険料は変わりません。

整理すると、共働き夫婦の被扶養者認定はこのように考えます。

・原則は年間収入が多い方の被扶養者とする。

・年間収入の差額が多い方の1割以内の場合、「主として生計を維持する者」の被扶養者とする。

・年間収入の差額が多い方の1割超の場合、年間収入の多い方の被扶養者とする。

住民票の世帯主との関係

住民票の世帯主は、住民票上の代表者であって、主に世帯の生計を担っている人と考えられます。しかし、健康保険上の「主として生計を維持する者」と必ずしも一致する必要はありません。

様々な事情で夫婦の収入は変化するものです。健康保険においては、上述の基準に沿って、判断します。

ところで、健康保険で被扶養者認定手続きを行うとき、被保険者と被扶養者のマイナンバー及び所得税法上の扶養家族であることについて事業主の確認を受ければ、住民票等の添付書類は必要ありません。(協会けんぽの場合。健保組合の被保険者は加入されている健保組合に確認ください)

子どもが生まれたばかりでマイナンバーがすぐに入手できないときは、戸籍謄本(抄本)か住民票の写しが必要となります。この場合、住民票は被保険者が扶養認定を受ける子と同居していて、被保険者が世帯主である場合に限られます

夫が世帯主で、妻が子どもを扶養するときは(マイナンバーがない場合に)戸籍謄本が必要となる点に注意しましょう。

被扶養者認定後に状況が変わるとき

夫婦で年間収入が逆転する場合

夫婦のいずれかが大幅に昇給することもあるでしょう。また、転職や退職などによって大きく状況が変わることも考えられます。

今後1年間の年収見込額が夫婦で逆転し、主に生計を維持する者でなくなる場合は、被扶養者認定を削除することになります。

このとき、まず年間収入が多くなった方の保険者が被扶養者を認定することを確認してから、年間収入が少なくなった夫婦の一方が被扶養者削除手続きを行います。この順序は必ず守るようにしましょう。

扶養者が育児休業を取得するときは?

扶養者として主に生計を維持する者と認められた方が、新たに育児休業等を取得した場合はどうなるのでしょう?

産休や育児休業を取得すると、多くの会社では給与が支給されません。

このように育児休業で収入が減少したとしても、休業期間中は被扶養者の地位安定の観点から、特例的に被扶養者を異動する必要はありません

ただし、新たに誕生した子どもについては、改めて上述した基準によって認定手続きを行うことになります。

まとめ

お子さんが生まれたら、すぐに健康保険証を手に入れたいと思いますよね?

名前が決まったらすぐに手続きが取れるよう、夫婦共働きで年収が同程度の場合は、どちらの被扶養者とするか事前にご夫婦で話し合っておくことをおすすめします。


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執筆者プロフィール
佐佐木 由美子

社会保険労務士、執筆家、MBA。グレース・パートナーズ株式会社代表。働き方、キャリア&マネー、社会保障等をテーマに経済メディアや専門誌など多数寄稿。

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