こんにちは、佐佐木 由美子です。
職業人生の長期化に伴って、いよいよ定年後に特化した大人のための仕事図鑑が求められる時代になってきたか…と、本書を見たときに思いました。
高齢期の就労・賃金を専門とするリクルートワークス研究所の坂本貴志さんが、65歳以上・640万人のデータを分析し、まとめた書籍「月10万円稼いで豊かに暮らす 定年後の仕事図鑑」(ダイヤモンド社)。

本書では、65歳以降は月10万円を稼ぐことで豊かに暮らせるとし、高齢期から始めやすい仕事19種、100の仕事を取り上げて紹介しています。
65歳以上就業者の平均年収や平均労働時間、男女の就業比などのデータもわかりやすく記載されており、各職業に関するインタビューとして、リアルな声も紹介されています。
これまで安定した企業で、長い間勤務してきた人にとっては、特に新鮮に映るはずです。
これらはまったく別世界と言ってもよいでしょう。
現状では、まだ60歳定年が優勢なため、「65歳までは継続再雇用制度を利用して働こうか」、と漠然と思っている方は多いかもしれません。
実際、多少年収や役職が下がったとして、60代半ば頃まではこれまでの仕事経験を活かして働き続ける選択肢は、満足度が高いというデータもあります。
では、それ以降はどう働いていくか?
本書のメインテーマは、60代半ば以降の「小さな仕事」です。
小さな仕事とは、報酬はそれほど高くはないものの、労働時間が短く、仕事の負荷やストレスが少ない、さらに世の中に必要不可欠で社会に貢献する価値ある仕事の一群を指しています。
会社勤めが長い方にとって、小さな仕事はピンとこない、という人が多いと思われます。
そういう人こそ、広く現実を知るために参考になると言えるでしょう。
私は「定年前後の働き方大全100」を上梓しましたが、高齢期の仕事や働き方は多様です。
労働条件においても、現役時代と違ってフルタイムではなく、短時間化する傾向が強くなります。
そのときに、ぜひ知っておいていただきたいことが、社会保険や労働契約に関すること。
これまでの「会社にぜんぶお任せします」、というスタンスから、「私はこうしたいです」と意見を伝え、時に交渉する必要が出てくるからです。
労働契約も、正社員からほぼ有期雇用契約の非正規に変化します。給与と関連して、労働日数・時間をどの程度にするか、社会保険に加入していた方がよいのか否か。
特に高齢期となると、医療や年金に関する話は、身に迫ってくるものがあります。
働き方とこうした保障が直結してくることを、現役世代においてはあまり意識されていないかもしれません。しかし、非常に重要です。
高齢期の仕事や働き方を考える際に、ぜひこうした知識もあわせて参考にしていただければ…と思いました。
