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働き方

雇われる働き方・雇われない働き方、その先へ

働き方

こんにちは、佐佐木 由美子です。

コロナ禍をきっかけに、働き方を見直す人、また見直したいと思う人はたくさんいたのではないでしょうか。

働き方を考えることは、つまり自分がどんな生き方をしたいのか、という根源的な問いにもつながってきます。

あなたが「働く」ことをイメージするとき、どのようなスタイルをまず思い描くでしょうか。会社員?それとも、フリーランスでしょうか。

私は学生時代、働くといえば、会社に就職することだと思っていました。(公務員を選ぶ友人もいましたが、自分は公務員に向いていないだろうと考え、選択肢に含めませんでした。)

その後社会に出て、必ずしも働くということは、会社員だけではないということに気づかされたのです。

これから社会に出ようとするなら、あるいはすでに働いていて転職を考えているなら、会社に勤めることに限らず、いろいろなワークスタイルがある、ということを念頭に置いて考えるといいかと思います。

働き方を大きくわけると、組織に属する「雇われる働き方」と、自分でビジネスを生み出す「雇われない働き方」があります。

雇われる働き方(組織に属して働く)

正社員、アルバイト、パートタイマー、契約社員、派遣社員、嘱託など呼び名はそれぞれですが、使用者と労働契約を結び「労働者」として働くことを言います。

労働契約には、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)と、期間の定めのある労働契約(有期労働契約)の2種類があります。

正社員と非正規社員という言葉がありますが、これは法律用語ではありません。一般に、正社員は月給制で無期労働契約・フルタイムで働く人を指しますが、正社員の呼称で基幹的な仕事に携わる人を言います。

従来の日本型雇用システムにおいては、終身雇用・年功序列が多く、また解雇規制も強いため、正社員になれば安心だという社会的な認知がありました。正社員神話は今も根強く、将来安泰とまではいかなくとも、非正規労働者と比べると雇用が安定しているとは言えます。

非正規労働者とは、一般に正社員以外のすべての労働者を指します。給与は時給制で、有期労働契約のケースが多いため、生活が安定しにくいところがあります。

ただ、高いスキルを持っている方などは、給与も比較的高く、契約社員や派遣社員としてプロジェクトベースで一定期間働く人も混在しています。

いずれにしても、労働者であることに変わりなく、労働基準法をはじめとする労働諸法令に手厚く守られています。最低賃金も保障されているため、働いていればたとえ成果が上がらないとしても、必ず毎月給与がもらえます。また、一定要件を満たせば、年次有給休暇なども与えられます。

さらに、労働保険(労災保険・雇用保険)や社会保険(健康保険・厚生年金保険)もあり、対象者には要件があるものの、労災保険は労働者であればすべての人が対象となります。

雇われない働き方

フリーランス、個人事業主などの自営業者や経営者、起業家などが代表的です。フリーランスとは、「実店舗がなく、雇人もいない自営業主や一人社長であって、自身の経験や知識、スキルを活用して収入を得る者」と定義*されています。そのため労働者を一人でも雇っていれば、経営者・起業家とします。

*「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」(2021年3月内閣官房、公正取引委員会、中小企業庁、厚生労働省の連名)

いずれにしても、自分でビジネスを生み出して運営している人たちです。「労働者」には該当しないので、労働諸法令の対象とはなりません。つまり、いくら働いても最低賃金の適用もなく、有給休暇もありません。

フリーランスのように一人でビジネスをしていても、法人化することは可能です。法人化している場合は、社会保険(健康保険・厚生年金保険)に役員として加入することができます。法人化しない場合は、市町村等の国民健康保険と国民年金に加入することになります。

労働者の場合は、使用者からの指揮命令を受けて労務を提供することになりますが、フリーランスや経営者は基本的に誰かの指示を受けることなく自分で仕事のやり方を決められます。取引先も自分で交渉して契約することになります。

経営者として従業員を雇用していれば、一人ではできないことを組織で対応していけるため、できる範囲が大きく広がります。

一方、労働者を守る立場になり、雇用への責任が生じます。

雇われない働き方といっても、フリーランスであるのか、経営者であるのかによって、立ち位置が大きく変わってくるといえるでしょう。

両方のポジションで働くハイブリッド型

最近は、副業・兼業、複業・ポートフォリオワーカーとして働く人たちが徐々に増えています。コロナ禍以降、一段と注目を集めていると言えるでしょう。

たとえば、正社員×フリーランス、正社員×アルバイト、正社員×起業家、契約社員×契約社員、派遣社員×パートタイマー、経営者×正社員、フリーランス×経営者……など、様々な組み合わせが考えられます。

こうした両方のポジションで越境的に働く人、つまりハイブリッド型の働き方がもっと自然になっていくのではないでしょうか。

私たちの寿命が延びる一方、企業の寿命はどんどん短くなっている時代です。リスクの異なるタイプの仕事やワークスタイルのポートフォリオを組むやり方は、VUCA化するこれからの時代にはマッチしているとも言えます。

このようなハイブリッド型は、従来の労働法制や社会保障の枠に収まり切れないところがあります。法律の見直しなども今後必要になってくるでしょう。

個人でポジショニングを考える時代

私は、大学卒業後に会社員からキャリアをスタート、転職し、個人事業主、そして経営者となって現在に至ります。勤務時代には、当時はまだ珍しかった副業も経験しました。様々な働き方を経験することで、それぞれの良さや課題も体感しました。

ひとつ言えることは、その時々で自分はどうありたいか進むべき方向を考え、トライ&エラーを繰り返してきたことです。

ライフステージによって大事なものは変わっていきますし、社会の状況もどんどん変わっていきます。そうした変化を柔軟に受け入れて、変わっていくことに向き合う方が、人生は面白いのではないかと思います。

もはや同じ会社に新卒から定年まで勤め上げるような働き方は、考えにくい時代です。

働き方の特性、それによって変わるマインドセットやルールなど幅広い視野を持って、これからの働き方について考えてみてはいかがでしょうか。
  

執筆者プロフィール
佐佐木 由美子

社会保険労務士、執筆家、MBA。グレース・パートナーズ株式会社代表。働き方、キャリア&マネー、社会保障等をテーマに経済メディアや専門誌など多数寄稿。

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