こんにちは、佐佐木 由美子です。
この夏、オーストリアに海外ワーケーションを実践し、仕事をしつつ大好きな芸術や建築を満喫しました。
ワーケーションに関するレポートは別の機会に譲るとして、このエントリでは、特に印象深かったひとつである分離派会館(Secession)についてシェアします。
ちなみに、分離派会館へ行く前に、ウィーン世紀末美術の殿堂である「レオポルト美術館」でエゴン・シーレの作品群をはじめ、グスタフ・クリムト、リヒャルト・ゲルストル、コロマン・モーザー、オスカー・ココシュカ、ヨーゼフ・ホフマンらの傑作を堪能しました。

それだけに感慨深くSecessionを鑑賞できたといえます。
ウィーン分離派会館とは
ウィーン分離派は、グスタフ・クリムト(1862-1918)が他の芸術家たちとともに保守的な美術家協会を脱退し、1897年に結成された新進芸術家のグループ。
そして、1898年に建築家ヨゼフ・マリア・オルブリッヒ(1867-1908)の設計によって、分離派会館の建物が完成しました。

一目見たら忘れることのできない、ユーゲントシュティールの個性的なデザイン。
金色のメッキが施された月桂樹の葉による球形(通称「金のキャベツ」)は、Secessionのシンボルといえます。ちなみに、月桂樹の葉は2500枚もあるそう。
分離派会館のファサードも注目したいところです。
正面上部には、新しい芸術表現を追求するウィーン分離派の理念が掲げられています。

“Der Zeit ihre Kunst, der Kunst ihre Freiheit”
「時代には芸術を、芸術には自由を」
彼らの理念が、言葉だけでなく、建築というかたちで具現化されているのがSecessionなのです。
当初から、造形的な斬新さゆえに、大いなるセンセーションを巻き起こしたというのも頷けます。



入口の階段を上って入場すると、正面にはガラスの天井で覆われた広い中央ホールが広がり、右手にはショップ、2階には小さめな展示室、地下には3部屋の展示室があります。
毎年さまざまな展覧会が開催され、最先端の現代アートが紹介されています。
私が訪問した際、正面奥の広い展示室では、Ariane Muellerの『Fische sind ins Meer gefaltet wie das Meer in die Fische 』が展示されていました。

地下の展示室ではJeremy Shawの「Towards Logarithmic Delay」が開催されていました。

一番奥の部屋では、赤いガラス瓶に入れられたキャンドルがグリッドパターンで配置されているインスタレーション。

作品の内部から脈動する音が次第に強くなっていき、ランダムに光る炎とともに異空間へ誘われていく感覚に包まれます。
クリムトの《ベートーヴェン・フリーズ》
地下の展示室をさらに下っていくと、クリムトの《ベートーヴェン・フリーズ》が地下ホールに展示されています。

幅約34メートル、高さ約2メートルの大作。
これは1902年のベートーヴェン展覧会のためグスタフ・クリムトが制作したもの。ベートーヴェンの交響曲第九番を視覚的に解釈・表現したものです。
2019年に東京都美術館で行われた『クリムト展 ウィーンと日本 1900』で原寸大の複製は見ましたが、「いつか本物を鑑賞したい」と思っていました。
地下ホールでは、ヘッドフォンが幾つか置かれており、ベートーヴェンの第九の4楽章を聴きながら、じっくりと作品を堪能することができます(ヘッドフォンは無料で自由に利用できます)。

天井の高いホールの上部の壁画を見上げながら、流れてくる音楽とともに鑑賞できる特別な体験。
この空間にいると、自然と物語の中へ誘われていきます。
もともとベートーヴェン・フリーズは、1902年のウィーン分離派の第14回展のために制作されたものでした。
その後美術コレクターが購入し、ナチスの接収されたのちに、長い時間を経てオーストリア所有物に。オーストリア・ギャラリーからの長期貸出し品として、分離派会館の地下に、この作品のためだけに作られた特別展示室において公開されています。
世紀末ウィーンにおける重要な建築物であり、芸術作品といえる分離派会館Secession。
クリムトの息吹を感じることができる、貴重な場所です。

探訪メモ:
入場料は大人13€、シニア(65歳以上)は10€、26歳未満の学生は7.5€。オンラインで事前購入しても、窓口で購入しても同じ料金設定。2025年8月31日現在の価格。最寄駅のKarlsplatzから徒歩すぐ。カフェなど飲食施設は無し。詳しくは公式サイト(ドイツ語・英語)へ。
クリムトやシーレも通ったというCafé Museumがすぐ近くにあるので、あわせて訪れたい。
