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社会保険とお金

「106万円の壁」は今後どうなる? 短時間で働くときの社会保険の加入基準

社会保険とお金

こんにちは、佐佐木 由美子です。

近年、「年収の壁」が何かと話題ですが、「106万円の壁」とも言われている短時間労働者の社会保険加入基準が、2025年の年金制度改正で見直されることになりました。

パートタイマーなどで働く人にとって、また短時間労働者を雇用する企業にとっても、今後どのように変わるのか、しっかりとおさえておきたいところです。

社会保険(厚生年金保険・健康保険)においては、会社員の配偶者等で一定の収入がない人は、被扶養者(第3号被保険者)として、社会保険料の負担が発生しません。

しかし、パート等で働くなどして一定の収入を超えると、社会保険料の負担が発生し、その分手取り収入が減少するため、これを回避する目的で就業調整する人もいます。

その年収基準のひとつが、「106万円の壁」(年収換算で約106万円となることから)と言われています。

いわゆる「106万円の壁」とは?

現在、会社で厚生年金の被保険者数が常時51人以上の場合は「特定適用事業所」となり、以下の要件に該当すると、短時間労働者として社会保険に加入することになっています。

  • 週の所定労働時間が20時間以上
  • 所定内賃金が月額8万8,000円以上
  • 雇用期間の見込みが2か月以上
  • 学生ではない

106万円という数字がクローズアップされていますが、あくまでも所定内賃金月額8万8,000円以上が収入のラインとなっています。

2025年の年金制度改正法により、所定内賃金が月額8.8万円以上とする賃金要件については、最低賃金の状況を踏まえ2025年6月から3年以内に撤廃されることになりました。

さらに、被保険者数50人超の企業を対象とする企業規模要件については、10年かけて段階的に縮小・撤廃されることとなります。

具体的には、2027年10月から被保険者数36人以上の企業に引き下がります。

なお、こうした時期を待たなくても、労使の合意があれば、「任意特定適用事業所」として、社会保険に加入することは可能です。この場合、要件に該当する人はすべて加入対象となります。

社会保険加入拡大の対象となる短時間労働者への支援も

企業規模要件の見直しなどにより、新たに社会保険の加入対象となる短時間労働者に対し、3年間事業主の追加負担により、社会保険料の負担を軽減できる特例的な措置が実施されます。

事業主が追加負担した保険料については、国などがその全額を支援するとしています。

最低賃金も引き上げが加速するなかで、所定内賃金を月額8.8万円までに抑えようというのは、得策とはいえません。

むしろ働いて収入を得て、自分自身の社会保障を手厚くしていく方向を目指していく方が現実的といえるでしょう。

現状では、まだ「106万円の壁」が存在しますが、近い将来に撤廃されることは、ぜひ覚えておいてください。

執筆者プロフィール
佐佐木 由美子

社会保険労務士、文筆家、MBA。グレース・パートナーズ株式会社代表。働き方、キャリア&マネー、社会保障等をテーマに経済メディアや専門誌など多数寄稿。

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