こんにちは、佐佐木由美子です。
デジタル給与の解禁、あなたはどう思いますか?
9月13日に開かれた厚生労働省の労働政策審議会(労働条件分科会)で、賃金の一部をキャッシュレス決済の口座に振り込む「デジタル給与払い」が大筋で合意されました。
年度内に必要な省令改正が行われる予定で、早ければ2023年春にもデジタル給与時代の幕開けとなるかもしれません。
賃金支払いの5原則
そもそも、労働基準法には「賃金支払いの5原則」と言われるルールがあります。
これは、①通貨で、②直接労働者に、③全額を、④毎月1回以上、⑤一定期日を定めて、支払わなければならないというもの。
通貨とは現金のことで、労働基準法第24条(賃金の支払)に定められた古くからある鉄板ルールです。
ただし、例外として、銀行口座や証券総合口座への振込みも、本人の同意があれば認められています(労働基準法施行規則第7条の2)。もちろん、本人の指定する口座に限られますが、銀行振込が例外ということを意外に思われるかもしれません。
これらは、労働者の大切な賃金を守るために設けられたルール。
この例外の規定に、デジタル口座を加える、というスキームです。
いわゆる〇〇ペイというようなキャッシュレス決済口座は、資金移動業による登録制の事業で、不正利用された場合の補償は各社の約款によります。
これまで労務管理の現場においては、5原則が守られていないケースを見聞きすることがありました。少し前まで「会社が指定する〇〇銀行の〇〇支店にしか給与は振り込みません」などという話もあったくらいです。
給与デジタル払いのメリット・デメリット
コンサバな労働行政において、デジタル給与の解禁というのは、かなり思い切った見直しと言えます。
審議会では、口座残高の上限は100万円、それを超える分は従来通り銀行口座などに振り込む仕組みが提案。ただし、キャッシュレス決済の事業者が破綻したときにどう保証されるかなど、不透明な部分もまだ多いところです。
それこそ、キャッシュレス決済の方が銀行の振込手数料より低ければ、企業側がデジタル払いを従業員に強く求めるケースも出てくるかもしれません。
労働者の意に反してデジタル払いをすることを防ぐために、同意書の提出を条件とし、守らない場合には労基署の指導などを行う、ということのようですが・・・
現金を持ち歩く手間もなく便利ではあるので、キャッシュレス自体を否定するつもりは全くありません。時代は確実にキャッシュレスの方向に流れている中で、給与だけ特別視するのはどうか?という意見もあるかもしれません。
でも、私が給与を受け取る立場であったとしたら、デジタル給与振込は利用しないでしょう。今のところ、個人的なメリットは感じられないので。
一方、「チャージなしで使えて便利!」と喜ぶ肯定派の人たちもいるでしょう。
お金の使い方やライフスタイルは人それぞれ。それは自由でいいと思います。
ただ、給与となると、生活の糧になる大事なもの。
しっかりとお金が守られる法的な仕組みが求められます。