働き方

中小企業における女性活躍推進の考察

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これまで、多くの中小企業経営者の方たちと接する機会がありました。

仕事柄、ほとんどが人事労務や社会保険に関するご相談です。

様々なタイプの経営者と対話を重ねていくうちに、女性の人材活用において一定の傾向があるのでは?と仮説めいたものが自分の中に芽生えていきました。

女性が活躍している中小企業もあれば、そうでない企業も存在します。

この違いはどこからきているのか?

「中小企業は、経営者次第」と言われることが多いですが、それでは漠然としすぎています。

この違いについて、今まであまり着目されてこなかった中小企業経営者の「企業観」と「行動特性」の2つの要因から明らかにしようと試みました。

それをまとめた研究論文が「経営者の企業観及び行動特性と人事管理の関連性について~中小企業における女性活躍推進の考察」(佐佐木 2018)です。

分析対象は、労働者数300人以下の中小企業経営者(上場・未上場問わず)で、業種はサービス業を中心に、製造業、不動産業、金融業等多岐に渡ります。調査方法は、事前に質問紙調査票を配布し、その後半構造化インタビューを実施する方法で行いました。

研究論文は大学院で発表(優秀論文賞受賞)したものですが、公に発表する機会を逸したままとなっていたので、論文要旨(抜粋)をシェアします。


本研究の目的は、中小企業における人事管理が経営者の企業観及び行動特性に関連性がある点を明らかにすることである。ただし、人事管理は、女性の人材活用に限定したものである。

これまでの先行研究から、女性活用に関する人事管理は、「女性活躍推進型」「均等推進型」「両立支援型」「女性非活躍型」の4つに類型化されることが明らかとなっている。

しかし、なぜこのように類型化されるのかを明らかにした調査研究はない。そこで、本研究では、経営者の企業観と行動特性の両者が、女性活用に関する人事管理の在り方を規定していると考え、次の4つの作業仮説を立て分析を行った。

1.経営者の企業観が「関係維持型」かつ「女性的行動特性」の経営者の企業では、「女性活躍推進型」の人事管理となる。

2.経営者の企業観が「目標管理型」かつ「女性的行動特性」の経営者の企業では、「均等推進型」の人事管理となる。

3.経営者の企業観が「関係維持型」かつ「男性的行動特性」の経営者企業では、「両立支援型」の人事管理となる。

4.経営者の企業観が「目標管理型」かつ「男性的行動特性」の経営者の企業では、「女性非活躍型」の人事管理となる。

本研究では、経営者の企業観を2つの理念型に分類して比較検討した。一つは経営において重視する要素として、売上・利益の拡大や企業規模の拡大・成長等を重視する「目標管理型」であり、他方は従業員の満足度や社会への貢献等を重視する「関係維持型」である。

また、経営者の行動特性については、リーダーシップに関して、ガーズマ・ダントニオ(2013)が提唱する「女神型リーダーシップ」に関する研究を活用した。彼らは世界13か国の65,000人を対象に調査を行い、125の資質を「男性的」「女性的」「どちらでもない」に分類し、リーダーシップに関する研究を行った。

本研究では、決断力、分析力、逆境に強いといった「男性的」な資質と、柔軟性、直観的、共感力といった「女性的」な資質の2つを理念型として「男性的行動特性」又は「女性的特性」として分類し、生まれもった性別ではなく、本人の行動特性が人事管理においてどのように影響を及ぼしているのかを、企業観と合わせて分析した。

その結果、4つの作業仮説どおりにはならなかったが、次の特徴が明らかとなった。「男性的」又は「女性的」行動特性と人事管理の類型の間に関係は見られなかったが、経営者の企業観が「関係維持型」の場合は、人事管理が「女性活躍推進型」になる傾向が強く見られた。

つまり、売上や規模拡大といった結果を重視する経営者よりも、従業員や顧客、取引先との関係性を重視し、プロセス志向の経営者の方が、女性活躍を推進されている状況が確認できた。


中小企業の課題として:

今後、生産年齢人口の減少により、人手不足が深刻化する中で、中小企業にとっては人材確保が大きな経営課題となります。経営する以上、利益を上げるという命題は避けられませんが、目標管理型に代表される「売上・利益の拡大」など結果を重視する経営スタイルが行き過ぎると、成果を求めるあまり、長時間労働も厭わない無制約な働き方が定着する懸念もあります。

たとえば、KPIに労働時間の削減や休暇取得率の具体的数値目標を含めて生産性向上を図ることや、性別に関わりなく誰もが場所や時間など柔軟性で多様な働き方ができるようにするなど実効性のある働き方改革を行っていくことが求められます。ただし、それが形骸化されたものでは意味がありません(女性活躍推進法における行動計画の策定等は要注意)。

女性非活躍型の企業においては、関係維持型の要素(社会への貢献、取引先との共栄・共存など)を積極的に取り入れることも解決策の一つとして挙げられます。女性管理職は自然発生的に増えるものではありません。上司の評価ポイントに女性の育成を採り入れることなども有効でしょう。上司の部下育成にかかるマネジメントは重要であり、職場の女性たちが「自分は期待されている」と肌で感じ、モチベーションを高められるような組織風土を育てていくことは大切です。


新型コロナのパンデミックによって、好むと好まざるとにかかわらず、私たちは大きな変革と向き合わざるを得ない状況となりました。さらにデジタル化の進展によって、様々な職場でリモートワークが可能となり、働き方や生き方を変えることは不可能ではない、という見方が広まり始めています。

パンデミックをきっかけに、働き方の柔軟性を高める未曽有のチャンスが到来しています。これを企業も、個人もどう捉え、行動していくか。人生100年時代を迎え、多様な選択肢が広がる中で、その真価が問われています。


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